東京都世田谷区は2025年度から、区内3地区で第5世代移動通信システム(5G)を活用したスマートシティの実証実験を開始する。防災、交通、子育て支援など7分野にわたり、住民参加型のサービスを検証する。この取り組みは、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクなどの通信事業者と連携し、地域課題の解決を目指す。
5Gを活用した具体的なサービス内容
実証実験は世田谷区の3地区で実施される。一つ目は防災分野で、5Gの高速・大容量通信を活用し、災害時の避難情報や被害状況をリアルタイムで住民に伝えるシステムを構築する。具体的には、区内に設置されたカメラやセンサーから得たデータを5G経由で集約し、AIが分析することで、避難所の混雑状況や危険エリアを即座に住民のスマートフォンに通知する。
二つ目は交通分野で、区内のバスロケーションシステムや信号機のデータを5Gで連携させ、渋滞緩和や公共交通の利便性向上を図る。例えば、バスの運行状況をリアルタイムで把握し、利用者に最適な乗り継ぎルートを提案するアプリを開発する。さらに、自動運転バスの実証も計画されており、2025年度中に特定ルートでの走行試験を実施する予定だ。
子育て支援と高齢者見守りも
三つ目の分野は子育て支援で、5G対応のウェアラブル端末を活用した子どもの見守りサービスを提供する。保護者がスマートフォンで子どもの位置情報や健康状態を常時確認できるようにするほか、公園や通学路に設置されたセンサーが異常を検知した場合、即座に通知が届く仕組みを整える。
高齢者向けの見守りサービスも実証する。区内の高齢者宅に5G対応のカメラやセンサーを設置し、転倒や長時間の無活動を検知した際に、家族や介護事業者に自動連絡するシステムを導入する。世田谷区は高齢化率が23%を超えており、このサービスは地域包括ケアシステムの強化に貢献すると期待されている。
住民参加型の実証実験
世田谷区は今回の実証実験を「住民参加型」で進める方針だ。区内の住民モニターを募集し、実際にサービスを利用してもらった上で、アンケートやヒアリングを通じて改善点を洗い出す。区の担当者は「新しい技術を住民目線で検証し、本当に役立つサービスを選別したい」と述べている。
実証実験の期間は2025年度から2027年度までの3年間を予定し、総事業費は約10億円を見込む。うち5億円は国からの補助金で賄う。世田谷区は2019年からスマートシティ構想を進めており、今回の実証はその一環となる。
通信事業者との連携
通信事業者各社は、5Gの基地局やエッジコンピューティング設備を区内に設置し、実証実験を技術面で支援する。NTTドコモは「世田谷区の多様な地域課題を解決するため、5Gの特性を最大限に活かしたソリューションを提供する」とコメント。KDDIも「地域密着型のサービス開発を通じて、スマートシティのモデルケースを創出したい」と意気込みを示す。
世田谷区は、この実証実験の成果を基に、2028年度以降の本格運用を目指す。将来的には、区内の全地区にサービスを拡大し、他自治体への展開も視野に入れている。



