NTTが提唱する次世代通信基盤「IOWN(Innovative Optical and Wireless Network、アイオン)」構想が、着実に実現へと歩みを進めている。IOWNは、光電融合技術を中核に据え、現在の5Gをはるかに超える超高速・大容量・低遅延の通信を実現する構想だ。2024年には一部のサービスで実用化を目指すとしている。
IOWN構想の核心:光電融合技術
IOWNの最大の特徴は、電子ではなく光を使って情報処理を行う「光電融合技術」にある。現在の通信網では、光ファイバーで伝送された信号を電気信号に変換して処理しているが、この変換プロセスがボトルネックとなり、速度や消費電力の面で限界があった。IOWNでは、この変換を極限まで減らし、デバイスレベルで光を直接処理することで、理論上は現在の100倍以上の速度と、100分の1以下の消費電力を実現するという。
NTTの研究開発責任者は、「IOWNは単なる通信インフラの進化ではなく、社会全体のデジタル変革を支える基盤となる」と述べている。具体的には、遠隔医療や自動運転、リアルタイムの3Dホログラム通信など、現在のネットワークでは実現が難しい高度なサービスが可能になると期待されている。
実用化へのロードマップと課題
NTTは、IOWNの実用化に向けて段階的なロードマップを策定している。2024年には、データセンター間の接続など、限定的な用途で光電融合技術を導入したサービスを開始する予定だ。その後、2025年以降に一般の通信網への展開を進め、2030年までに本格的な普及を目指す。
しかし、実用化にはいくつかの課題が残る。最大の壁はコストだ。光電融合デバイスの製造には高度な技術と設備が必要で、現時点では量産化のめどが立っていない。また、既存の光ファイバー網や5G基地局との互換性を確保するための標準化も急務となっている。さらに、IOWNに対応したアプリケーションやサービスの開発も、普及には欠かせない。
NTTはこれらの課題に対し、国内外の企業や研究機関との連携を強化している。2023年には、インテルやソニーなどとIOWNの実用化に向けたコンソーシアムを設立し、技術開発と標準化を加速させている。
社会実装への期待と展望
IOWNが実用化されれば、社会のさまざまな分野で革命的な変化が起きると期待されている。例えば、医療分野では、遠隔手術の遅延がほぼ解消され、専門医が離れた場所からでもリアルタイムで手術を行えるようになる。製造業では、工場内の機器を超低遅延で制御することで、生産効率が大幅に向上する。また、エンターテインメント分野では、臨場感あふれる8KVR映像のストリーミングや、触覚まで伝送するテレイグジスタンスが現実のものとなる。
一方で、IOWNの普及には、通信事業者だけでなく、デバイスメーカーやコンテンツプロバイダーなど、エコシステム全体の協力が不可欠だ。また、サイバーセキュリティの観点から、新たな脅威に対応するための技術開発も求められる。
NTTは、IOWNを「2030年代の社会インフラ」と位置づけ、総額数兆円規模の投資を計画している。同社のトップは「IOWNは日本のみならず、世界のデジタル社会をリードする技術になる」と自信を見せる。5Gの先を見据えたNTTの挑戦は、通信の常識を覆す可能性を秘めている。



