宮崎県伝統的工芸品「宮崎ロクロ工芸品」の職人、田村和也さん(69)は、ケヤキやサクラなどの木材をロクロで回転させながら削り、皿や茶わんを作り続けて半世紀にわたる。幼い頃に耳が聞こえなくなり、子どもの時から工作などのものづくりに親しんできた。なめらかな曲面やぬくもりある仕上がりが特徴の伝統工芸品を、丁寧な仕事でこつこつと生み出している。
半世紀にわたるロクロ工芸への道
製作に励む田村さんは、宮崎市大島町の障害福祉サービス事業所「向陽園」内にある作業場で、ロクロに固定された木材が勢いよく回り出すと、専用の刃物を当てて削っていく。刃物が削り出す木くずが舞い、木の香りが漂う。
「製品を手に取った人が『きれい』と思えるように仕上げるのが難しい」。質の高い曲面を生み出すには、削る厚さを均一にしたり、表面を丹念に磨いたりする技術が必要という。
聴覚を失い、ものづくりに没頭
宮崎市出身の田村さんは、5人きょうだいの末っ子として生まれ、2、3歳の頃に聴覚を失った。学校では図画工作が得意で、「一人で絵を描いたり、工作したりするのが好きだった」という。
ろう学校の高等部を卒業後の1973年、教員の紹介で当時授産場だった向陽園に入所。ロクロを使った木工品作りを始めた。慣れない作業で叱られる日々が続いたが、早く仕事を覚えようと、発注を受けたらどんな内容でもすぐに取りかかった。一つ一つの製品の作り方を頭にたたき込み、製品を仕上げていく腕は上達していった。
仕事への打ち込みが生んだ技術
作業をする現場には手話を使わない人もおり、コミュニケーションを取れずに苦労したこともあった。仕事ができるようになったことを妬まれたのか、先輩から強く当たられたことも。「仕事で勝つんだ」と作業に打ち込んだ。