日本政府が、次世代通信規格「5G」の通信網を国家管理する方向で検討を進めていることが、複数の政府関係者への取材で明らかになった。中国の通信機器大手・華為技術(ファーウェイ)など中国企業の影響力を排除し、国家安全保障を強化する狙いがある。政府は官民連携で基地局を整備し、通信網の運営を一元管理する新たな枠組みを模索している。
背景に中国リスク
政府が5G通信網の国家管理に踏み切る背景には、中国の情報収集活動への警戒感がある。米国や欧州連合(EU)が、ファーウェイ製機器の使用を制限する動きを強める中、日本も同様の措置を検討してきた。政府関係者は「5Gは経済活動や社会インフラの根幹をなす技術であり、外国企業に依存するリスクは無視できない」と指摘する。
日本政府はこれまで、通信事業者各社が自主的に調達先を選定する方針を取ってきたが、サイバー攻撃や情報漏洩の懸念から、より厳格な管理体制が必要と判断した。総務省は2023年度中に、5G通信網の安全性を評価する新たな基準を策定する方針だ。
官民連携の新組織
政府は、官民連携で5G基地局の整備を加速させるため、新たな組織を設立する計画。具体的には、政府が出資する特殊会社を設立し、通信事業者と共同で基地局を建設・運営する案が浮上している。これにより、中国企業の機器が排除され、日本企業が開発した機器の採用が促進される見通しだ。
経済産業省の担当者は「5Gは産業競争力の源泉であり、官民一体でインフラを整備することが急務だ。国家管理の枠組みを通じて、安全性と効率性を両立させたい」と語る。政府は、2025年までに全国の主要都市で5Gサービスを開始する目標を掲げており、国家管理の導入で実現を後押しする構えだ。
通信事業者の反応
一方、通信事業者の間では、国家管理の動きに慎重な声も出ている。ある大手通信会社の幹部は「国家管理が過度になると、民間の自由な事業展開が阻害される恐れがある。政府には透明性の高い運用を求めたい」と指摘する。また、基地局整備のコスト負担を巡っても、官民の調整が必要となる。
政府は、通信事業者の意見を聞きながら、2024年の通常国会に関連法案を提出する方向で調整している。法案では、通信網の安全性審査や、外国企業の参入制限などが盛り込まれる見通しだ。
5G通信網の国家管理は、国際的にも注目を集めている。米国や英国がすでに中国企業の排除を進める中、日本がどのような枠組みを構築するかが、今後の国際的な通信政策の行方を左右する可能性がある。政府は、日本の技術力と安全保障を両立させる制度設計を急いでいる。



