ピッチクロック導入に横たわる難題、タイマー管理の新職種に50~60人必要か
ピッチクロック導入に横たわる難題、タイマー管理の新職種に50~60人必要か

日本プロ野球界に近い将来、新たな職種が誕生するが、一筋縄ではいかない難題もある。投球間隔制限「ピッチクロック」の将来的な導入が決まり、運用にはタイマーを管理する「ピッチクロック・タイムコーディネーター」(仮称)が最低でも50~60人は必要となる。「人集め→修練→継続」は滞りなく進められるのか。日本野球機構(NPB)は今オフにも募集を行う方向だが、道のりは簡単ではなさそうだ。

投球間隔を計測するのは人間

NPBはすでにサイン伝達機器「ピッチコム」の来季からの導入を決め、12球団に通達している。使用は義務ではなく任意となる見込み。2軍戦では今季途中から、1軍での導入に備えて試験運用していた。投手と捕手のサイン伝達を円滑にし、内野手との連係を高めることが狙いで、来春のキャンプ、オープン戦から試行する。

米大リーグでは2022年から導入され、今年3月のワールド・ベースボール・クラシック(WBC)でも採用された。実際に体験した代表選手から、日本でも導入を求める声が上がっていた。

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一方で、ピッチクロック導入の時期は決まっていない。乗り越えなければならない「人の問題」が横たわっているからだ。投球間隔を計測するのは人間。シーズンが始まれば最大6試合=6人のタイムコーディネーターが必要となる。オープン戦に始まり、公式戦、クライマックスシリーズ、日本シリーズという長いスパンで、総人員は50~60人必要とみられる。

誰にでも簡単にできる仕事ではない

誰にでも簡単にできる仕事ではない。①野球に精通し、心身ともに健康で、1試合(約3時間)、集中力の切れない状態を保てる②背後の人間関係に問題がなく、好きな球団に肩入れすることもない③SNSなどでの誹謗(ひぼう)中傷を覚悟して職にあたれる④例えば1試合担当して約2万円前後の低賃金でも我慢できる-などの条件の下、どれだけ適性のある人材を採用できるのか。

ピッチクロック導入4シーズン目の大リーグには、タイムコーディネーターにあたるスタッフが100人以上いる。前職は野球選手や審判経験者などさまざまで、中高齢者が多い。しかし、タイパのいい仕事とはいえず、離職率は高い。日本のプロ野球でも同じ現象が起きる可能性はある。

大リーグの現行ルールでは、投手はボールを受け取ってから、走者なしの場合は15秒以内、走者ありの場合は18秒以内に投球動作を開始しなければならない。打者は残り8秒の時点までに打席に入り、打つ準備を完了している必要がある。投手側が時間を超過すれば「1ボール」、打者側の準備が遅れれば「1ストライク」がピッチロック違反としてそれぞれ追加される。

野球好きにはたまらない?

最大のポイントは、どのタイミングで計測を開始するかだ。ファウルフライの後や牽制(けんせい)球の後など、試合中は微妙なタイミングが多くある。不公平があってもいけない。野球の流れを熟知していなければならず、想像以上に難しい。しかし、視点を変えると野球好きにはたまらない仕事ともいえる。特等席で試合を見ることができる。

NPBは今オフ、人員を募集し、研修会を行った後に来春のキャンプ、教育リーグなどでテストを行うようだ。「AI失業」という言葉まで生まれている現代で、人間にしかできない新しい仕事の誕生。ギャラは高くはないが、やりがいのある仕事かもしれない。

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