来季から読売巨人軍の新監督に就任する松井秀喜さん(52)が、背番号「90」を選んだ。これは、昨年6月に89歳で死去した長嶋茂雄さんが監督時代に着けていた番号だ。23日に行われた就任記者会見では、恩師への敬愛がにじみ出た。
「遅いよ」と苦笑 長嶋さんへの思い
会見で松井さんは「本当は、長嶋監督にもこの姿を見ていただきたかったなという気持ちが正直あった」としんみりと語った。長嶋さんが声をかけてくれるとしたら何と言われるかとの問いには、「『遅いよ』じゃないですかね」と苦笑し、「この瞬間を楽しみにしてくださっていたと思います」と穏やかに笑った。
松井さんは昨年6月3日に長嶋さんが亡くなった際、米国から緊急帰国し、約2時間の対面を果たした。その際、「長嶋監督と生前、約束したこともあります。ここでは今はお話しすることができませんが、その約束を果たしたい」と話していた。会見で真意を問われると、「発言によって色々な臆測が飛び、当時のチームにすごく迷惑をかけた。言うべきじゃなかったと思っている。私の中では自主撤回したい」と陳謝。「皆さんご自由に(真意を)考察してください。それが答えかもしれないし、答えじゃないかもしれない。(約束は)私と長嶋さんだけのものだったというところ」と笑顔でけむに巻いた。
背番号90に込めた理由
背番号90は、長嶋さんが30歳代で監督に就任した際に付けた番号だ。就任1年目の1975年は球団史上初の最下位に沈んだ歴史があり、松井さんは「恐らく『選手・長嶋茂雄』がいない巨人軍で大変苦労されたと思う」と述懐。さらに、「昨年長嶋監督は89歳で亡くなった。(存命ならば)今年90歳で、その年に90をつけるというのも理由です。これから新たなスタートを切るには90番が一番ふさわしいという気持ちで選ばせていただいた」と続けた。
この日の会見では、長嶋さんからプレゼントされ、2013年5月5日の国民栄誉賞のセレモニーでおそろいで着て臨んだ濃紺のスーツとネクタイを着用。「常に自分の近くに監督がいるという気持ちで日々を過ごしたい。監督も『おお、着てるか』と思ってくれたんじゃないかな」と明かした。「私は長嶋茂雄にはなれません」と本音を漏らしながらも、「自分は自分のできることに集中してやっていきたい」と語った。
関係者らの期待
星稜高校で松井さんを育てた山下智茂さん(81)は「人間的にも素晴らしく、選手を育てるのはうまいと思う。全国の期待に応えてほしい」と語った。父・昌雄さん(84)は本人からのメールで監督就任を知り、「大変だと思うけれど、とにかく頑張っていきたい」との内容だったといい、「秀喜は幸せ者。ファンに希望を与える野球をしてほしい」と話した。
巨人ファンの演出家・テリー伊藤さん(76)は「巨人の打力面が劣っている中、最高のタイミングでの就任だと思う。長嶋さんから打撃指導を受けたように、打者を直々に指導して第二の松井を育ててほしい」と期待を寄せた。その上で「選手の個性を重視する米大リーグでの経験も生かし、新たな監督像を作ってくれるでしょう。来季は日本のプロ野球から目が離せなくなりそうだ」と語った。
東京ドームを訪れていた東京都北区の会社員(28)は「長嶋さんが松井さんを育てたように、今度は松井さんが次世代の強打者を育て、強い巨人を取り戻してほしい」と興奮気味に語った。夫婦で巨人ファンという東京都町田市の主婦(66)は「いつか監督として戻って活躍してくれると思っていた」と笑顔を見せた。
読売新聞は23日、松井さんの監督就任を伝える号外を約63万部発行し、東京や大阪などで配布した。東京・有楽町駅では午後5時頃から配布が始まり、受け取った通行人らが背番号「90」のユニホームを着た松井さんの写真入りの号外を広げていた。