横浜高校を率いて全国制覇5度を達成した名将・渡辺元智さんが81歳で亡くなった。1970年代から2000年代まで、全ての年代で優勝した唯一の監督として知られる。
松坂投手を擁した春夏連覇
渡辺さんは、プロ野球・西武や米大リーグ・レッドソックスなどで活躍した松坂大輔投手を擁した平成10年の春夏連覇が印象的だ。松坂投手は「目標がその日その日を支配する」という明治生まれの教育者・後藤静香の詩『第一歩』の一節を座右の銘とし、渡辺さんはその前で毎日詩をそらんじ、高みへと導いた。
指導者としての歩み
家庭環境に恵まれなかった幼少期、野球に打ち込みプロを目指した思春期。けがで夢を諦め、荒れた日々を経て母校横浜高の監督に就いたのは20代前半だった。苛烈なしごきでチームを束ねる一方、素行に難のある球児を自宅に引き取ったこともあった。
優れた選手を育て、同時に人を育てることに心を砕いた指導者だった。「甲子園という目標があれば同じ練習でも質が異なる。その積み重ねが最後に大きな差となる」という言葉も残している。しごきから自主性を重んじる野球へ、時代とともに指導法を変えた点でその手腕は卓抜だった。
夏の甲子園での手向け
大詰めを迎えた夏の甲子園では、亡くなる前日、横浜が快勝で4強入りを決めた。渡辺さんが目をかけていたエース織田翔希投手の完封は、手向けの花となった。「人生の勝利者たれ」の口癖も思い出される。記録と記憶と、「人」という財産を残して旅立った。



