ミステリー作家・越尾圭さんが選ぶ「450ページ超え」の分厚い3作品
ミステリー作家・越尾圭さんが選ぶ「450ページ超え」の3作品

愛知県在住のミステリー作家・越尾圭さんが、書店で手に取った本を紹介するコーナー。8月も後半に入り、酷暑で外出が難しい日には、室内でじっくり読書を楽しむのも一興だ。今回取り上げるのは、腰を据えて読みたい「450ページ超え」の小説3作品。暑さを忘れるほどのめり込める分厚い作品が並ぶ。

歴史×社会派ミステリー『造反有理 文革楼の殺人』

まずは、稲羽白菟著『造反有理 文革楼の殺人』(行舟文化)。1968年、文化大革命のただ中にある中国。弾圧を逃れた文化人たちが密かにかくまわれる山中の円楼「文閣楼」で、奇妙な見立て殺人が相次ぐ。

外界から隔絶された<館>に加え、誰が敵なのかもわからない時代そのものが、巨大な密室のように登場人物たちを追い詰めていく。621ページという圧巻のボリュームながら、物語の勢いに乗せられ、その長さを感じさせない。胸が熱くなる終盤の展開も秀逸で、豪華な箱入りの装丁も本好きにはうれしいところ。歴史小説、本格ミステリー、社会派ミステリーという三つの顔を存分に楽しめる一冊だ。

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身近な関係が崩れる『ふつうの家族』

続いて、辻堂ゆめ著『ふつうの家族』(講談社)。湘南の一戸建てで暮らす父、母、社会人の長男、大学生の長女。一見どこにでもいそうな桜石家だが、嵐の夜、玄関で倒れていた見知らぬ青年をきっかけに、その「ふつう」が少しずつ崩れていく。

青年を家に招き入れたのは誰なのか。疑い合ううち、それぞれが家族に隠してきた秘密までが明らかに。家族だからこそ知っていることもあれば、家族だからこそ言えないこともある。そんな身近な関係の奥を覗き込むような面白さがあり、4人それぞれの持つ秘密に共感もできるのが著者の手腕。469ページの長編ながら、青年をめぐる謎や家族の秘密が少しずつ明かされるたびに次が気になり、するすると読み進められる家族ミステリーだ。

闇バイトの禁断の扉に迫る『黒幕』

最後に、越尾圭著『黒幕』(角川春樹事務所)。元新聞記者の主人公が、息子の死をきっかけに闇バイト事件の取材を始め、真相を調べていくうちに禁断の扉を開けてしまい……というストーリーで、著者の作品の中では一番のスケール感を誇る社会派ミステリー。

ニュースで耳にすることも多い闇バイトだが、その背後では誰が、どのように人を動かしているのか。スピード感を重視して書かれた459ページの長編は、その長さにもかかわらず一気に読める内容になっている。黒幕の正体に驚かされることだろう。

今回はどれも450ページを超える作品だが、それぞれの世界に浸っているうちに、あっという間に読み終えてしまう3作を紹介した。夏の暑い日を、厚くて熱い小説とともにお過ごしいただければ幸いだ。

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