広島東洋カープが1949年の創設以来、黎明期以来の大ピンチに陥っている。くすぶり続ける「ゾンビたばこ」問題の全容解明を果たさなければ、球団への信頼は地に落ち、今秋のドラフト会議にも大きな影響を及ぼす。
6連敗で借金19、指揮官は「またしっかり準備していきたい」
新井貴浩監督(49)率いる広島は12日のヤクルト戦(神宮)に惨敗し、今季ワーストタイの6連敗。借金は「19」に膨らんだ。試合後、指揮官は「またしっかり準備していきたい」と話したが、グラウンドを去る選手たちの背中はどこか泣いているようにも見受けられた。
今の広島は戦力を論じる以前の問題だ。チームに衝撃を与えた「ゾンビたばこ」の一件は全容解明にはほど遠く、選手がプレーに集中できていないようにも映る。
羽月元選手の逮捕と証言、矢野内野手の登録抹消
「ゾンビたばこ」と呼ばれる指定薬物エトミデートを使用したとして、広島県警は1月27日、医薬品医療機器法違反の疑いで羽月隆太郎元選手(26)を逮捕。球団は活動停止処分を科し、起訴後の2月24日に契約を解除した。チーム内への蔓延が懸念されたが、球団は尿検査などを実施した結果、「内部調査でクロと断定された選手がいなかった」と発表した。
ただ、羽月氏は5月15日の初公判で起訴内容を認め、「周囲に(薬物を)使っているカープ選手がいた」と証言。同28日にはSNSのライブ配信で「私を含め6人のカープ選手が同じ人物から購入していた」と暴露した。
さまざまな臆測が飛び交う中、広島県警は6月1日、羽月氏にエトミデートを譲り渡したとして医薬品医療機器法違反の疑いで、会社役員の男を逮捕した。7月13日には、写真週刊誌「FLASH」のウェブ版が、一昨年に遊撃手としてゴールデングラブ賞に輝いた矢野雅哉内野手(27)と男が遠征先のホテルの部屋で一緒にいるツーショット写真や、矢野と小園海斗内野手(26)、田村俊介外野手(22)がバーで男と同席している写真を掲載。球団は同17日、矢野の出場選手登録を抹消した。
松田オーナーが涙ながらに謝罪、球団の対応に疑問
球団は同30日、矢野と前川誠太内野手(23)が広島県警の家宅捜索を受けたと発表。松田元オーナー(75)は同日、マツダスタジアム内で取材に応じ、「ショックが大きい。(ファンに)申し訳ない気持ちでいっぱい。予想しない選手が出てきたので非常に驚いている。一生懸命やっている選手も疑われることが気の毒」と涙ながらに謝罪した。
だが、球団は警察が動き、さらに報道を受けてからようやく重い腰を上げており、ここまでの対応はお粗末といっていい。禁止薬物に対する問題意識の低さも感じる。球団内部に自浄作用が働かないという印象を与えれば、アマ球界の選手たちや指導者は広島への入団を敬遠するだろう。ドラフトで指名した選手を自前で育てる、カープ伝統の育成方針が崩れる心配さえある。
黎明期の「たる募金」とファンの信頼
チーム低迷→監督交代という〝表紙替え〟だけで、現在の窮状は打開できない。遠征費の捻出に苦労し、選手の給料も遅配となった黎明期。当時の本拠地、広島総合球場(現Balcom BMWベースボールスタジアム)の玄関に酒だるを置いて寄付を募る「たる募金」が始まり、市民が球団の資金難を救った。これまで支えてくれたファンの信頼に応えなければ、マツダスタジアムに閑古鳥の鳴く日が訪れるだろう。



