東京都立青鳥(せいちょう)特別支援学校(世田谷区)ベースボール部は、知的障害のある生徒たちが所属し、公式戦初勝利を目指している。今年も全国高校野球選手権西東京大会の初戦で明法に0―20(五回コールド)で敗れたが、序盤は互角の戦いを繰り広げた。
新チームを支える前主将とOBたち
第4代主将を務めた3年生の式守優太選手は、引退後も練習のサポートで校庭に通う。後輩へのコーチ役を務めたいと久保田浩司監督に告げていたといい、「みんなに(打撃練習で)トスしたり、バッティングとか守備とか教えたりしてます。練習試合にも、ついて行ってます。卒業しても(練習のサポートで)戻ってくるつもり。ベースボール部が好きですし、公式戦初勝利のときに、やっぱり一緒にいたい」と話す。
前副主将の岩本大志選手は外野手へのノックを請け負い、クマガイ・クリストファー選手は捕手用の防具を装着し、ワンバウンド投球の処理のコツを実演していた。
公式戦初のダブルプレーと敗戦
7月10日の明法戦で、青鳥校は一回に守備でスタンドを沸かせた。無死一塁で、遊撃手の岩本選手がライナー性の打球をつかみ、一塁に転送して併殺を完成させた。「公式戦での、ダブルプレーの成功は初めてでした。何度も練習したプレーでした」と岩本選手。中堅手の式守選手もグラブをたたいて叫んだ。この回は1失点でしのぎ、先発の2年生・上野空虎選手の力投もあって二回は無失点。三回以降に押し込まれて敗れた。
OBたちの帰巣本能
試合後、久保田監督に促され、3年生があいさつに立った。式守選手は「夏の大会は終わってしまいましたが、1、2年生は秋の大会があります。そこに向けて頑張りましょう」と述べ、「きょうをもって3年生はユニホームを脱ぎますが」と続けると、「練習、もう来てくれないんですか?」と声が上がった。
スタンドには、主将や副主将を務めた白子悠樹さん、首藤理仁さん、八木秋大さん、斎藤翔さんの4人の卒業生が、就職先の休日を調整して駆けつけていた。式守選手は「たくさん先輩が来てくれて、本当にうれしかった。僕も後輩を大切にしたいです」と語った。
久保田監督は「2023年に都高校野球連盟への加盟を認められ、別に『OBのよりどころになれば』と期待していたわけじゃないんです。そのとき、そのときを一生懸命に過ごして、卒業の際に『野球、やって良かった』と思ってほしくて、『この先も野球をやりたい』と考えてほしくて……。ただ、それだけでした」と明かす。
OBは校庭へ頻繁に現れる。「特に『来いよ』なんて呼びかけもしていませんが」と苦笑しつつ、「社会に出て、仕事に就いて、うまくいかないこともあるんでしょう。もちろん彼らは言わないし、こちらも尋ねない。『ノックでもやっていけよ』とバットを渡したら、ひとしきり打って、OB仲間や在校生と会話して、すっきりした顔になって帰っていく。頼んでないのに、もらったばかりの給料をはたいてノックバットを寄付してくれたり、大量の飲み物を差し入れてくれたり……。図らずも、ベースボール部が彼らにとって『戻れる場所』とか『救われる場所』になっているのだとしたら、うれしいですけどね」と語った。
校庭はかろうじて内野のダイヤモンドが確保できるサイズ。その小さな空間で生まれた磁力の数々が、「青い鳥」の“帰巣本能”を刺激して引き寄せる。卒業生寄贈のクーラーボックスには、「つらい時ほど、仲間とともに全力で未来をつかみにいこう。みんなと過ごした時間を、僕たちは忘れない」とのメッセージが書き込まれている。



