東京ヤクルトスワローズが、村上宗隆選手や山田哲人選手といった主力選手を欠きながらも、前年の最下位から一転してリーグ首位争いを繰り広げている。その快進撃の原動力として注目されるのが、池山隆寛監督のリーダーシップスタイルだ。日本総合研究所のリサーチ・コンサルティング部門マネジャー石山大志氏とシニアマネジャー宮下太陽氏が、その背景を分析する。
主力不在でも首位争い、その要因は「集団的効力感」
今季のヤクルトは、主砲の村上選手やチームリーダーの山田選手が不在という厳しい状況下にある。しかし、チームは結束を強め、逆転勝ちも少なくない。選手へのインタビューでは、「今は、逆転した経験がチームの自信になっていると思います。リードされても『まだいける』という感覚を持つ選手が増えたと思います」(出所:集英社スポーツ総合情報・ニュースサイト web Sportiva「【プロ野球】「監督がチームに元気をくれる」 奥川恭伸、長岡秀樹たちが明かす池山ヤクルト快進撃の舞台裏」、26年5月15日配信、26年6月30日閲覧)という発言が聞かれ、集団的効力感の高まりを示している。
オーセンティックリーダーシップが生む信頼と挑戦
この背景には、池山監督の「オーセンティックリーダーシップ」があると考えられる。これは、自らの信念や経験に基づいて一貫した言動を示すリーダーシップスタイルだ。池山監督は、自身の現役時代の豪快なプレースタイルとは対照的に、データを重視する野村克也監督の下で学んだ経験を持つ。しかし、両者に共通するのは、自らの原点を大切にしている点だ。野村監督の「困ったら“原点”に帰れ」という言葉は、リーダー自身にも当てはまる教訓である。
日本総研の調査では、倫理や正しさを強く押し出すだけのリーダーシップ(倫理型リーダーシップ)は、かえって個人のプロアクティブ行動を抑制する可能性が示された。つまり、正しいやり方をなぞるだけよりも、自分が本当に信じることを一貫して体現する方が、人は動くのである。池山監督の一貫した姿勢が、選手の信頼を集め、主体性を引き出している。
リーダーシップの出発点は「原点」にあり
リーダーシップの理論や手法は数多く存在するが、それらはあくまで手段である。重要なのは、リーダー自身が何を大切にし、どのような経験を積んできたのかを自覚し、それを言葉と行動で示すことだ。池山監督は、自らの原点を問い直し、それをチームに体現することで、選手の挑戦を促している。シーズンの成否を監督だけで説明することはできないが、池山監督のリーダーシップがチームの躍進を支える重要な要因であることは間違いない。
あなた自身の原点は何か。まずはそこから見つめ直すことが、リーダーシップの第一歩かもしれない。



