日本初開催となる愛知・名古屋アジアパラ競技大会(読売新聞社協賛)の開幕まで1か月を切った。活躍が期待されるアスリートが自身の言葉で競技への思いを語るシリーズ。今回は陸上女子でSCSK所属の前川楓選手(28、津市出身)が登場した。
100メートルと走り幅跳びで自己記録を目指す
前川選手は10月のアジアパラ競技大会で100メートルと走り幅跳びに出場する。目標は100メートルで16秒を切ること、走り幅跳びで4メートル70以上を跳ぶことだ。地元・三重の隣の愛知県で行われるため、「家族や親戚が総勢15人くらい応援に来てくれると思うので、とても心強いです」と話す。
現在の陸上トレーニングは週5日、1日2~3時間。そのほかに筋トレや体のケアのためのはり治療も行っている。「疲れがたまると、どうしてもタイムや記録が伸びなくなってしまう」ため、練習では強度や体への負荷のかけ方を試し、夜は毎日10時頃には布団に入るようにしている。
ただし、アジアパラ競技大会の陸上は夜まで行われる予定のため、今後は夜型の生活に調整していくという。「日が落ちて寒くなると体が固まります。アップすると体が温まるので、本番では待ち時間の過ごし方にも気をつけたいですね」と語った。
九州移住で練習環境が大きく変化
最近の大きな変化は、5月に拠点を大阪から九州へ移したことだ。鹿児島にある全天候対応型の陸上競技施設や宮崎での集中練習をしたいと移住を決めた。鹿児島の施設は屋内でも100メートルが走れるほどの大きさがあり、五輪代表選手も利用している。現在住む宮崎県都城市からは1時間かからないという。
「これまでは雨が降ると練習メニューを変更するなどしていましたが、ここでは予定通りにトレーニングをすることができるのでとても効率的です」と前川選手。移住前は不安もあった九州での生活だが、「住めば都です。海が近いのでスーパーのお刺し身などが安いですし、果物もおいしいですね」と笑顔を見せる。現在は大会に向けて自炊中心の生活で、地元のおいしいお店はまだ知らないといい、「アジアパラ競技大会が終わったら宮崎や鹿児島の新しいお店を『開拓』したい」と話す。
義足への理解を広める活動も継続
前川選手は大阪や三重で交通事故で義足になり、陸上選手になった経験を講演したり、コーチであるパラリンピック銀メダリストの山本篤さんらと義足の人向けのランニング教室を行ったりしてきた。「これからは九州でも同じ活動をできればいいなと思っています」と語る。
また、義足を身近に感じてもらおうと、愛犬の「くう」をモデルにした絵本をこれまで3冊出版している。第4弾は製作途中で「もう6割くらいできてきています。来年くらいには出版できるといいですが、内容はお楽しみにしてください」と話した。
日本パラ陸上競技連盟の増田明美会長(1984年ロサンゼルス五輪女子マラソン代表)は「前川選手が書いた『くうちゃん』シリーズの絵本を読んだり、読み聞かせを聞いたりした子供や親たちみんなが彼女のファンになっている。競技力に加えて『発信力』もある新しいタイプのアスリート。パラ陸上の看板娘として、アジアパラ競技大会での活躍を期待したい」と期待を寄せる。
取材後記
取材した宮崎での練習では、パラリンピック走り幅跳び銀メダリストの山本篤コーチらと走りのフォームを真剣な表情で確認し、熱心にトレーニングに取り組んでいた前川選手。一方でピンク色のスニーカーやヒョウ柄のトレーニングウェアといった自分が好きな物を身につけるなど、おしゃれへの意識も高い。陸上を心から楽しんでいる様子が印象的だった。



