ベルギー1部リーグ・シント=トロイデンVV(STVV)が、日本企業の支援を基盤にリーグ最高水準の黒字経営を実現している。2022-23シーズンに黒字化を達成した同クラブのCEO、立石敬之氏は「プレーオフ1進出は大きな目標だった」と振り返る。クラブ運営においてスポーツ面と財務面は不可分であり、その両輪を回す独自の仕組みが注目を集めている。
日本企業スポンサーが売上の4割を占める
STVVの黒字化を支えた最大の要因は、日本企業からのスポンサー収入だ。売上構成の約40%を日本企業のスポンサー収入が占め、移籍金、放映権収入、地元企業スポンサー収入、チケット販売が続く。現在、日本企業のスポンサーは200社を超えるという。
DMMが買収した2017-18シーズン当時、日本企業のスポンサー収入はわずか2%だった。立石氏は「買収当時、収益の中心は移籍金でした。鈴木彩艶選手のパルマへの移籍金に代表されるように、移籍は大きな収益につながります。しかし、移籍金は変動要素が大きく、クラブが安定して1部に残るには選手にお金をかける必要がある。そこでスポンサー収入を増やせないかと考えました」と説明する。
オールジャパンの理念で新たなスポンサー枠を創設
STVVの経営は、現地マネジメントを担うベルギー本社と、営業・広報を担当する日本支社で構成される。当初、日本支社はサッカーへの関心が高い経営者やDMMとのシナジーを期待する企業を中心に、ユニフォームや広告看板への社名掲出といった一般的なスポンサー契約を獲得していた。
しかし、ユニフォーム掲出枠には限りがある。立石氏は「STVVはベルギーのクラブのため、日本のサッカークラブのようにスタジアムの感動を体感してもらう機会が少ない。しかし、逆転の発想で、Jリーグのクラブが地域密着で商圏が決まるのに対し、欧州だからこそ日本全国の企業からスポンサーを募れると考えました」と語る。
そこでDMMは「オールジャパンでSTVVのプロジェクトを良くしていこう」という理念を掲げ、ユニフォームにロゴは載らないが手頃な金額で出資できる「コーポレートプラン」を新設。この営業をDMM本体の営業チームが担当し、国内で多岐にわたる事業を展開するDMMの営業力が発揮された。コーポレートプランへの賛同企業は90社を超え、現在も増加傾向にある。これがスポンサー収入増加の転換点となった。
スポンサー同士の交流でビジネス機会を創出
さらにSTVVは、スポンサー企業同士が交流できる「ビジネス交流会」を定期的に実施している。これにより、単なる資金提供にとどまらず、企業間のネットワーキングや新たなビジネスチャンスの創出を促進。スポンサー企業にとっては、クラブ支援が自社のビジネス拡大にもつながるメリットがある。
立石氏は「スポンサー企業が単なる広告主ではなく、クラブの成長を共に喜び、ビジネス面でも価値を得られる仕組みを目指している」と強調する。この取り組みが、日本企業の継続的な支援を支える原動力となっている。
リーグ最高水準の経営安定性
STVVの黒字経営は、ベルギーリーグの中でも最高水準とされる。移籍金収入に依存しがちな他クラブと異なり、安定したスポンサー収入基盤を構築したことで、経営の変動リスクを低減。選手への投資やクラブ施設の充実にも資金を振り向けられるようになった。
立石氏は「クラブが1部に残留し続けるためには、競争力のある選手層を維持する必要がある。スポンサー収入の安定が、そのための投資を可能にしている」と述べる。STVVのモデルは、欧州サッカークラブの新たな経営手法として注目を集めている。



