DMMがベルギーのサッカークラブ・シント=トロイデンVV(STVV)を買収してから、リーグ最高水準の黒字経営を実現している。その背景には、日本企業約200社によるスポンサー支援と、日本式経営の現地への丁寧な浸透がある。STVVのCEO立石敬之氏は「プレーオフ1進出は大きな目標だった」と語る。
スポンサー同士のビジネス交流会が生む相乗効果
立石氏は、スペインのサッカークラブにある「ソシオ」と呼ばれる会員制度に着想を得たという。「会員費によってクラブを支える運営方法です。その発想と似ています。しかし、スポンサー企業が増えるにつれて、理念への賛同だけでなく、直接的なエンゲージメントが必要なのではないかと思うようになりました」と説明する。
そこで始めたのが、スポンサー同士が交流できる「ビジネス交流会」だ。現在は月に一度、DMMの本社などで開催されている。STVVをハブとして、スポンサー企業同士のビジネスマッチングが生まれる場となっている。2026年6月に行われた年次スポンサー報告会には178社319名が参加し、そのうち半数が役員以上の職位だったという。
日本式経営を根付かせる試行錯誤と年3回の個人面談
財務の黒字化と並行して、現地組織の運営にも取り組んできた。個人主義が根付くベルギーで、日本的な経営を根付かせることは容易ではなかった。特に最初の2~3年は、ベルギーの国内法や従業員の気質の違いに戸惑いもあった。
「週38時間以上は働けない、祝日も必ず休まなければならないという法律があります。そのため、忙しい開幕前に社員が急に休むこともあります。さらに面談の場も日本とは大きく違います。日本では目標設定やどうスキルアップしていくかを話すのに対して、ベルギーの場合は条件面の交渉が多い。自分は100点満点の仕事をしている、というのが基本的な姿勢です」と立石氏は語る。
この認識のギャップを埋めるために導入したのが、年3回の個人面談だ。面談では数値目標の設定を行い、細かなディテールまですり合わせるようにした。日本企業では当たり前の取り組みを、丁寧に説明しながらベルギー本社にも浸透させてきた。「完全に現地スタッフが納得しているわけではないかもしれませんが、少しずつ理解してもらえるようになってきたと感じています」と立石氏は述べている。
日本企業200社が支える経営基盤
STVVの経営を支えるのは、DMMだけでなく多くの日本企業だ。現在約200社がスポンサーとして名を連ね、クラブの収益基盤を強化している。このスポンサーシップモデルは、単なる資金提供にとどまらず、ビジネス交流会を通じて企業間のネットワーキングや新たな取引の創出にも貢献している。
リーグ最高水準の黒字経営を達成した背景には、こうした日本企業のコミュニティと日本式のきめ細かいマネジメントがある。一方で、ベルギー国内からは「日本側から見れば『登竜門』でも…」といった批判も存在するが、立石氏は現地との対話を重視しながら運営を続けている。



