W杯日本代表7人輩出のベルギークラブ、日本企業が選手価値と移籍金を引き上げた理由
W杯日本代表7人輩出のベルギークラブ、日本企業が価値向上

ベルギー1部リーグのシント=トロイデンVV(STVV)は、FIFAワールドカップ2026の日本代表メンバー7人を輩出した。鈴木彩艶選手、谷口彰悟選手ら多くの日本代表選手が、海外進出の第一歩としてSTVVに所属。STVVは「日本人サッカー選手が世界へ羽ばたく登竜門」として機能している。その背景には、経営権を握る日本企業DMMグループの戦略がある。

ベルギーリーグの特性とSTVVの強み

STVVのCEOである立石敬之氏は、ベルギーリーグの特徴をこう説明する。「ベルギーリーグは、外国人選手の起用に関するルールが緩やかです。ベンチ入りメンバー20人のうち6名がベルギー人であること、というルールは存在しますが、極端に言えば先発11名を日本人選手にすることも可能です。また、ベルギーはEUの真ん中にあり、スカウトが見に来やすい場所に位置しています。そのため、選手の活躍がスカウトの目に留まりやすいのです」

鈴木彩艶の選択と価値向上

今大会の正GKである鈴木彩艶選手の例は象徴的だ。2023年夏、Jリーグの浦和レッズで活躍していた鈴木選手は、プレミアリーグの名門マンチェスター・ユナイテッドから完全移籍のオファーを受けていた。移籍金は当時のレートで9億円を超えていたとされる。しかし、鈴木選手は自らの意思でこれを断り、出場機会を求めてベルギー1部のSTVVへ期限付き移籍(レンタル)で加入する道を選んだ。そしてシーズン途中の2024年2月、STVVへの完全移籍が決まった(移行は同年7月)。

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立石氏はこの選択について、「鈴木選手に、STVVを選んでいただいた理由は出場機会が多いことです。彼がすばらしい素質をもっていることは誰もがわかっていました。しかし、成長過程にあるGKを起用し続けることは、クラブにとってリスクもあります。そのため、大きなクラブに行くほど、出場機会がなかなか得られません。STVVは、あのときの鈴木選手に必要な出場機会を用意することができました」と振り返る。

結果的に、鈴木選手の判断は正しかった。加入早々からSTVVの守護神となった鈴木選手は公式戦32試合に出場し、高いゴール阻止率を記録。2023年11月にはワールドカップ予選でA代表デビューも果たした。

移籍金の上昇とSTVVのビジネスモデル

さらに、鈴木選手は2024年夏、イタリア・セリエAのパルマへ移籍した。一連の移籍を金額で追うと、まずSTVVが買い取りオプションを行使して完全移籍させた際の移籍金は、推定350万ユーロ(約5億5000万円)。そこから1年余りでパルマへ売却したことになる。

パルマへの移籍金の額は媒体によって幅があり、サッカー専門サイトの『footballtransfers』は「パルマが約820万ユーロ(約13億円)を支払った」と伝える一方(2026年6月29日閲覧時点)、日本では「750万ユーロ(約12億円)、250万ユーロ(約4億円)のボーナス、将来移籍した際にSTVVにその移籍金の10%が支払われる」という条件だと報じられた。いずれにせよ、STVVが浦和レッズから数百万ユーロ規模で完全移籍させた選手を、1年余りで1.5〜2倍ほどの価値で送り出した構図は変わらない。

日本選手の移籍金課題とSTVVの役割

これまで日本選手が欧州クラブに移籍する際、移籍金がほとんどつかないケースが多く、選手の価値が適正に評価されていないという課題があった。STVVはDMMグループの経営のもと、日本人選手の育成と市場価値向上に貢献。出場機会を提供し、活躍の場を確保することで、選手の価値を高め、高額移籍金を実現している。

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