第108回全国高校野球選手権大会第11日の15日、和歌山県代表の智弁和歌山は3回戦で敦賀気比(福井)と対戦し、7-3で勝利した。四回まで両者無得点の投手戦となったが、五回に敦賀気比が2点を先制。七回まで安打をわずか4本に抑えられた智弁和歌山打線は八回、応援歌「ジョックロック」に後押しされ同点に追いついた。試合は延長タイブレークに突入し、延長十一回に勝ち越し。優勝した令和3年以来の夏8強をつかんだ。
魔曲「ジョックロック」、四回に異例の発動
智弁和歌山のアルプススタンドといえば、応援歌「ジョックロック」。高校野球ファンからは「魔曲」として知られ、主に終盤の逆転チャンスで流れを引き寄せる応援歌だ。吹奏楽部の部長を務める3年、藤井音寧さん(17)は「この曲ならではのテンポ感やリズム感があって特別な空気。甲子園でこれを吹けるのはうれしい」と話す。
2回戦の社(兵庫)戦は相手投手の好投で、終盤に得点圏に走者を置けず、ジョックロックは演奏できなかった。その悔しさもあったという智弁和歌山アルプススタンドは、この日の試合で両者無得点の四回にいきなり魔曲を〝発動〟。応援団長の2年、曽我部晃太郎さん(16)も「智弁の力を見せていく意味でやった。四回でやるのは初めて」と笑顔を見せた。先制とはならなかったものの、アルプススタンドのボルテージを一気に引き上げた。
八回に同点、延長十一回に勝ち越し
そして八回、無死一、二塁の好機で再び流れたジョックロック。疲れを感じさせない、全校応援で満員の大声援はグランドの選手に届いた。7番川原が左中間へ値千金の適時打を放ち、同点に追いついた。
藤井さんはこの曲を「伝統のある曲で、チャンスがあるならその時は全力で吹く」と笑顔。曽我部さんも「他の高校もやってくれているが、僕たちが本家。プライドはある」と話し、「今年は投打優秀なチーム。こちらからジョックロックで背中を押して勝ちにつなげたい」と流れる汗も気にせず答えた。
延長タイブレークに突入した十回は3度目の魔曲を発動。無死満塁の好機を迎えたが、4番山田が併殺打、5番楠本が投ゴロに倒れ勝ち越せず。十一回に5点を加え勝利を収めた。
応援団の集大成、次戦へ
応援団は2年生で引退する決まりだ。最後の甲子園となる曽我部さんは「これが集大成だが、応援のやり方は団として試行錯誤の段階」と苦笑いする。ジョックロックを魔曲たらしめているのは、得点圏に走者がいても演奏されるとはかぎらない点にある。くしくも出番のなかった十一回の攻撃が勝負を決した。劇的勝利を収めた智弁和歌山は、逆境をはね返す魔曲の歴史をまた一つ紡ぎ、次戦に挑む。



