西日本豪雨、母の胎内で生き抜いた2人の少年 名前に込めた特別な意味
西日本豪雨、胎内で生き抜いた2人の少年 名前に込めた意味

2018年7月の西日本豪雨で甚大な被害を受けた倉敷市真備町地区。当時、母親の胎内にいた2人の男児が、現在小学2年生に成長し、その名前に込められた特別な意味が注目されている。倉敷市立川辺小学校の吉田航君(7歳)と、市立箭田小学校の土師克哉君(7歳)は、いずれも豪雨を母体内でくぐり抜け、命の尊さを名前に刻まれている。

吉田航君「水を渡って救われた命」

吉田恵美さん(41)は、2018年7月6日、妊娠7か月だった。出産準備のため、当時住んでいた広島県から実家のある真備町川辺に戻っていた。夫の英樹さん(48)や当時1歳の長男(9)も一緒だった。雨が強まる中、両親や認知症の祖母らと2階で就寝。翌7日朝、小田川の氾濫で水が迫り、逃げる間もなく1階が浸水し、泥水が足元まで迫った。「もうだめだ」と覚悟したその時、おなかの中で赤ちゃんが動いた。「生き延びてこの子を守る」と勇気を得たという。夕方、近所の男性がベランダから小型の釣り船で救助。命をつなげられた実感に満たされた。

無事に出産したのは約3か月後の10月17日。「水を渡って救われた大切な命」との意味を込め、恵美さんは「航」と名付けた。現在、航君は水泳とピアノに励み、弟もできた。釣りが大好きで、「いつか、でかいチヌを釣るよ」と宝物の竿とリールを磨く。恵美さんは「人とのつながりを大切にし、困っている人を助けられる人になってほしい」と願う。

Pickt横長バナー — Telegram用の共同買い物リストアプリ

土師克哉君「困難に打ち勝つ人に」

土師愛香さん(40)は、真備町箭田の自宅周辺が泥水の海と化した光景を忘れない。2018年7月7日未明、「避難の用意をしていたのに、水が来てからは瞬く間だった」。生後9か月の長男(8)を抱っこした夫の雄さん(41)と雨の中、腰まで水につかって逃げた。何度も足を取られながら少し高い地区へたどり着き、親類の車に乗せてもらえた。数日後、全壊した自宅の片付け中に気分が悪くなり、妊娠に気付いた。「何か特別な意味がある命だ」と思えた。

2019年3月6日、倉敷市内のみなし仮設住宅で出産。水害の日を思い、「困難に打ち勝つ人に」と「克哉」と名付けた。その後も4人の子宝に恵まれ、男児6人兄弟の賑やかな家庭に。克哉君はお調子者ながら弟たちの面倒をよく見る。「ユーチューバーになるよ」と屈託がない。愛香さんは「どんな時も前向きに生きてくれるはず」と信じる。

8年後、ラジオで命名の由来を語る

あの日から8年。2026年7月4日、2人の母親は「エフエムくらしき」の特別番組収録に参加。2018年度に生まれた真備町の小学2年生と保護者を集めた番組で、成長した息子たちに目を細めながら命名の由来を明かした。2人の母親は、子どもがもう少し成長したらあの日のことを伝え、語りかけるつもりだという。「生まれてきてくれて、ありがとう」と。

Pickt記事後バナー — 家族イラスト付きの共同買い物リストアプリ