地下水で沸く滋賀・草津の銭湯「桜湯」、創業時から変わらぬ静かなぬくもり
地下水で沸く滋賀・草津の銭湯「桜湯」、創業時から変わらぬ静かなぬくもり

滋賀県草津市で唯一の銭湯「桜湯」は、創業から70年以上、地下水を使い、当時と変わらぬ岩風呂や20円のマッサージ機などで常連客に親しまれている。利用客は平日70~80人、休日100人ほどで、静かな湯のぬくもりを求めて訪れる。

創業時から変わらぬ設備

のれんがかかり、営業が始まったばかりの午後2時すぎ。桜湯には高齢者を中心にすでに10人ほどの常連客がやって来ていた。浴室の天井は半透明で、日の光が差し込んで、明るい。入り口から順に水風呂、泡風呂、水深80センチの深い風呂、ジェットバス。そして、奥に岩風呂とサウナ風呂がある。どれもこぢんまりしていて、せいぜい1~4人ほどしか一緒に入ることはできない。

「失礼します」常連客と一緒に浴室に入り、まずは泡風呂へ。体に泡の振動が当たって心地よい。このまま眠ってしまいたい…そう思った。締めとして名物の岩風呂につかった。複雑な岩の模様をじっと眺める。時折、「カーン」と風呂おけが洗い場に当たる音が響くだけの静かな浴室。たまった疲れが体の中から溶け出していくように感じた。

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創業者のこだわりが詰まった空間

昭和25年8月に創業。以来、風呂の湯には天然の地下水を使っている。シンプルで直線的な浴室=滋賀県草津市「浴室は直線的で、ゴジャゴジャしていない。男湯と女湯の造りは何もかも一緒。強いて言えば、女湯のサウナにはテレビがないくらい」。今時珍しく、人生の伴侶を「募集中」と言ってはばからない3代目の木村将之さん(50)が説明してくれた。

銭湯の細部には、創業者で左官職人だった祖父のこだわりがみられる。瀬田川の石を使った岩風呂=滋賀県草津市「岩風呂は瀬田川の真黒石(まぐろいし)と、あめ色と黒色の層が交互に重なるしま模様の虎石などを組み合わせ、ゴージャスな造り」と木村さんは胸を張る。浴室のタイルにはイタリア製も使い、洗い場には赤御影石が光る。脱衣所も凝った造りで、洗面台は大理石製。床は能登川(滋賀県東近江市)の上質なヨシが敷き詰められ、足の裏に心地よい。

常連客の満足と3代目の悩み

「いい湯加減。地下水を使っているから肌にもやさしいし、くつろげる」。ほぼ毎日、自宅から2キロほど歩いて通う男性(81)はこう語る。約40年前から電車で通う男性(68)も「お客さんも銭湯のスタッフも好感が持てる。ストレスを感じない」という。

利用客は平日で70~80人、休日は100人ほど。中には、自転車で琵琶湖を一周する「ビワイチ」に合わせて来店する人も。初めて訪れる人に快適な時間を過ごしてもらうには、どうすればいいだろうか。「もっと、ゆっくりとくつろげるスペースなど付加価値が必要かもしれない。若い利用者には『悪いな』と思う」と木村さん。その一方で、常連客からは「このままでいい」という声があるのも確か。設備を充実させるとなると費用もかかる。利用者は満足しているようだが、3代目の悩みは尽きない。

桜湯の概要

昭和25年創業の桜湯=滋賀県草津市桜湯滋賀県草津市大路1の16の6。営業時間は午後2~10時。日曜定休。大人(中学生以上)490円、中人(小学生)150円、小人(乳幼児)100円。JR東海道線草津駅から歩いて5分ほどなので、電車で通う常連客も多い。5台ほどの駐車場もある。

木村さんの母で、2代目の木村みち子さん(77)は桜湯の名前の由来を「創業者の父はおおらかだったので、日本を代表する花の名前をつけたのでは」と想像する。

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