最大震度7を観測した熊本地震の発生から28日で1か月を迎えた。被災地では復旧・復興の過程で様々な課題が生じており、大阪でも甚大な被害が想定される南海トラフ地震などに備える上で、その教訓を検証することが重要になっている。これまでに2回現地入りした防災施策に詳しい大阪公立大の菅野拓准教授に、学ぶべき教訓を聞いた。
災害発生初期の課題が変わらない
菅野准教授は、発生翌日と約1週間後に被災地に入り、熊本県八代市や宇城市、熊本市、氷川町を回った。その上で、災害発生初期の課題が2016年の熊本地震から変わっていないことへの危機感を語る。市町村は避難所運営に人手を取られ、支援が必要な高齢者らの把握や災害廃棄物の処理などの対応が後手に回る。支援物資は集積場所で目詰まりを起こし、避難所や被災者に届かない。避難所では1週間ほど雑魚寝が続いていたという。
市町村の負担を下げる方針転換を
なぜ改善されないのか。災害の度に避難所運営などの課題が提示され、対策が考案されてきたが、実行するのは市町村だ。高齢化などでマンパワーが減っているのに業務は膨らんでいく。課題の解決と同時に、被災した市町村の負担を下げるという根本的な方針転換が必要だと指摘する。特に発生3日後以降は、支援物資の配送はトラック協会や物流業者、避難所運営は他県の応援職員やNPOに委ね、市町村以外が中心となって被災者支援を回していくような態勢作りを進めてほしいと話す。
参考にすべき事例として、医療機関での患者搬送や避難所での健康管理は、DMAT(災害派遣医療チーム)など医療や保健衛生のプロが担うようになり、スピード感が大きく改善したことを挙げる。「餅は餅屋」の考え方が極めて重要だとして、市町村の職員には、自分たちにしかできないことを優先して取り組んでもらいたいと述べる。例えば、被災後に体調を崩すリスクが高い人がどこに、どの程度いるのか、情報を集約し、把握できるのは市町村だけだと指摘する。
「見えない被災者」の把握と備え
大阪で大規模地震に備える観点から懸念されることとして、「見えない被災者」の把握を挙げる。今回の熊本では、避難所の冷房が停電で使えなかったり、そもそもエアコンが設置されていなかったりして、在宅避難や車中泊を選択する人が多かった。人口の多い都市部での災害では、より増えることが予想される。市町村は「見えない被災者」について、戸別訪問や人流データの分析で所在を確認する仕組みを事前に計画するべきだと話す。
個人として備えておくべきことについては、自治体の対応力には限界があり、発生後数日間は大きく混乱し、公助も限定されるため、なるべく自力で乗り切れるよう家庭での物資の備蓄を進めてもらいたいと語る。災害時に孤立しないよう、周囲とのつながりを作っておくことも大事だとして、自治会や地域の子育て団体、民生委員は被災者支援に関する情報源にもなりうるので、うまく活用してほしいと呼びかける。
菅野拓准教授は1982年生まれ。人と防災未来センター(神戸市)主任研究員などを経て現職。2011年の東日本大震災では、被災者一人ひとりの状況に合わせて支援する「災害ケースマネジメント」に取り組んだ。能登半島地震を受けた石川県の対策検証委員会のメンバーなどを歴任し、防災庁設置に関する国の専門家会議の委員を務める。



