1983年7月20日から23日にかけて、島根県などで大雨が降り、「昭和58年7月豪雨」と呼ばれ、100人超が犠牲となった。当時、地元気象台の予報官は「経験したことのない大雨が降る」と考え、防災情報の発表文に「近来まれに見る大災害をひきおこす恐れ」と書いたが、最終的にこの文言は見送られた。大げさな表現はよくないと自ら削除したのである。あのまま発表していれば――。のちに予報官は悔やんだという。
データだけではない判断材料
現在、予報官はスーパーコンピューターや人工知能(AI)から得られたデータも分析し、警報を出すかなどを判断する。記者会見で発表する姿は国家公務員らしく冷静沈着だが、気象予報士の資格も持つ川西勝さん(元読売新聞編集委員、兵庫県立大客員教授)は「もっと人間らしさを出してはどうか」と言う。
近年の異常気象は、想定を超える惨事をもたらすことが少なくない。予報官は、データだけでなく豊富な知識と経験を踏まえ、時には直感も大事にして自分の言葉で呼びかけた方が差し迫った危険の脅威が伝わるのではないかというのだ。
情報は「伝える」だけでは不十分
情報は「伝える」だけでは意味がない。情報をもとに住民が適切な行動を取ることで初めて「伝わった」と言える。命を守る情報の伝え方について、皆で考えていく必要がある。



