千葉豪雨では、茂原市などを流れる一宮川とその支流でハード面の対策が奏功し、人的被害を防いだり、住宅の浸水被害を一定程度抑えたりすることにつながった。一方、千葉市では、運用を開始したばかりの雨水貯留槽3か所が満杯になり、行き場を失った水が内水氾濫を招いた。県などは、ハード面の対策だけでは限界があるとして、住民に行動を見直すよう促すソフト面の対応も強化していく方針だ。
一宮川流域で治水事業が奏功
熊谷知事は1日、茂原市など6市町村を流れる一宮川水系流域で県や地元市町村が進めてきた大規模治水事業について、自身のX(旧ツイッター)に「大規模な治水事業により、浸水被害を大幅に軽減できた」とつづった。
今回の豪雨では、流域の6時間降水量の平均が193ミリに達したが、住宅の床上・床下浸水は茂原市と長柄町の計222棟(1日時点)にとどまった。人的被害も確認されていない。2019年10月に同183ミリの大雨が降った際は、茂原、長柄、長南の3市町で計4337棟が浸水被害に遭い、氾濫した川に車が流されるなどして計7人が死亡した。
ハード対策の内容と今後の計画
繰り返される水害を防ぐため、県は20~26年度に423億円を投じてハード面の対策を強化。具体的には、鶴枝川と瑞沢川がそれぞれ一宮川に合流する約3キロ区間で川幅を20メートル拡張した。JR茂原駅の南西約3キロに位置する調節池を広げ、ためられる水を70万立方メートルから110万立方メートルに増やすなどした。
県は、29年度にかけてさらなる調節池の新設や河道改修を予定している。流域の6市町村も連携し、それぞれ下水道の整備やポンプの増強などに取り組んでおり、今回のような豪雨でも家屋や主要施設の浸水被害をゼロにすることを目指している。
千葉市で貯留槽満杯、内水氾濫
千葉市では、25メートルプール約54杯分に相当する計2万1100立方メートルの雨水を貯留できる3か所の新設貯留槽が全て満杯になり、被害の拡大を防げなかった。このうち一つはJR蘇我駅から約400メートルの場所にある公園の地下に設けられた。だが、同駅周辺では深さ1メートル程度の冠水が発生し、身動きが取れなくなった約4000人が同駅で一夜を明かした。
同市は17年、局地的な大雨や大型台風による浸水被害が多発していることを受け、「雨水対策重点地区整備基本方針」を策定した。浸水被害が発生した場合に経済的損失が大きい13の「重点地区」を設定。同地区では想定する1時間あたりピーク雨量を53.4ミリから65.1ミリに引き上げて下水道施設を整備してきた。
三つの貯水槽もこの方針に基づいて25年7月~26年3月に運用を始めたばかりだったが、観測史上最大の1時間115ミリの雨量には対処しきれなかった。29年度には、JR千葉駅近くの千葉公園に9700立方メートルの雨水をためられる貯留槽が完成する見通しだが、市の担当者は「今回のような想定を超える豪雨では、新たな貯留槽ができても対応できない」と危機感を募らせている。
ソフト対策強化へ課題検証
こうした現状について、熊谷知事や千葉市の神谷俊一市長らは「全てをハードで対応するのは費用面などで現実的ではない」などと口をそろえる。ハード面の整備に加え、ハザードマップの周知や災害時の情報共有のあり方といったソフト面の対策が必要だと指摘している。
県は、千葉豪雨で浮き彫りとなった課題を検証し、月内にも論点を整理する方針。熊谷知事は、ハード・ソフト両面で有効な対策を積み上げ、「都市型水害への対策に最も先進的な県を県民とともにつくる」と強調している。



