AI合成写真で近大入試不正、元講師逮捕 生体認証システム導入を検討すべきか
AI合成写真で近大入試不正 生体認証システム導入を検討すべきか

近畿大学の入学試験をめぐる不正事件で、大阪府警捜査2課は6月8日、偽計業務妨害などの疑いで、堺市北区の元講師、宮崎裕容疑者(35)を逮捕した。容疑者は、教え子になりすまして英語試験を受験し、AIで合成した顔写真を入学手続きに使用したとされる。捜査2課は認否を明らかにしていないが、関係者によると、動機について「不合格者を出したくなかった」という趣旨の供述をしていたという。

事件の概要と背景

逮捕状などによると、2025年9月、当時塾講師だった宮崎容疑者は、教え子の男子受験生になりすまし、英語試験を受験。2級に合格し、その結果を利用して同年11月、近畿大学の推薦入学試験に、自身と男子受験生の顔を合成した写真データを使って出願したとされる。

関係者によると、宮崎容疑者は男子受験生に「代わりに受験する」と持ちかけ、「指導するより自分が受けたほうが手っ取り早いと考えた」という趣旨の供述もしているという。事件当時、宮崎容疑者は業務委託契約に基づき、「個別教室のトライ」天王寺駅前校で講師を務めていた。警視庁は5月18日に同容疑などで逮捕し、捜査を進めていた。

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ネットに溢れるAI合成ツール

今回の事件では、インターネット上で入手可能なAIツールを使って顔写真を合成したとみられる。ネットを検索すると、「編集スキル不要」「簡単に顔合成」などとうたうサイトやアプリが多数見つかる。無料サイトでも、合成したい顔写真を入力するだけで数秒で作成が可能だ。顔の向きや表情などを細かく指定しながら画像を作成できるものもある。

関係者によると、宮崎容疑者はスマートフォンで利用できるインターネットのAIツールを使って2人の顔を合成したとみられ、その合成写真で近大に出願していた。英語試験では元講師自身の写真で受験していたため、書類を照合されても違和感に気付かれないようにする狙いがあった可能性がある。

不正の発覚と大学の対応

同じ合成写真は学生証にも転用されたため、受験生の母親が違和感に気付き、事件が発覚。画像を見た関係者は「じっくり見比べれば違和感に気付くような完成度」とした上で、顔形や輪郭は受験生に似ているため、「初対面でぱっと見た程度では写真の人物で間違えないと思ってしまうのではないか」と指摘する。

実際、近大は試験当日に本人確認を行っていたが不正には気付かず、いったん合格としていた。その後、不正が発覚し合格は取り消された。大学は「厳格な本人確認は必須で、顔や指紋などの生体認証による本人確認システムの導入も検討していくべきだ」としている。

専門家の見解

大学入試学会の理事長で大学入試に詳しい東北大学の倉元直樹教授は、「公正な入試のため、厳格な本人確認は必須で顔や指紋などの生体認証による本人確認システムの導入も検討していくべきだ」と試験官の目視による確認の限界を指摘する。

新技術を活用した不正対策にはコスト面の負担が増えるものの、倉元氏は「今後、不正行為がさらに巧妙化する可能性があり、国が予算をつけるなどして対策を進める必要がある。技術的な対策に加え、不正を行うこと自体が許されないという社会的な規範意識を維持することも重要だ」としている。

今後の課題

AI技術の進歩が目覚ましい中、今回の事件は入試制度の脆弱性を浮き彫りにした。ネット上には誰でも簡単に顔を合成できるツールが溢れており、悪用のリスクは高まっている。大学側は、本人確認の厳格化や生体認証システムの導入など、抜本的な対策が求められる。一方で、コストやプライバシーの問題もあり、導入には慎重な検討が必要だ。

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また、不正を防ぐためには、技術的な対策だけでなく、教育現場における倫理観の醸成も重要である。今回の事件を教訓に、入試の公正さを守るための総合的な取り組みが期待される。