中国国務院は2025年5月に公布した「外商投資安全審査弁法」に続き、対外投資の監督強化に向けた新たな規定を準備している。これは中国企業の海外進出「走出去」戦略の転機を示すものだ。
監督強化の背景
中国政府はこれまで、海外市場開拓やM&Aを通じた技術取得を積極的に支援してきた。しかし、中国企業がIT分野などで世界的競争力を獲得し、保護すべき技術やデータが増大したことから、監督強化へと方針転換した。特に、米国による対中輸出規制の強化や、メタによるAI企業買収案件が契機となっている。
リスク投資先の定義拡大
金杜法律事務所の戴氏は、従来の規定ではリスクを伴う投資先の定義が限定的で、主に中国と国交のない国やイランなど特殊な国が対象だったと指摘。今後は対象範囲がより細かく規定される見通しだ。
聞泰科技の事例
中倫法律事務所のパートナー、于治国氏は、リスク投資先に関する規定が中国電子機器大手・聞泰科技(ウィングテック)によるオランダの半導体大手ネクスペリア買収案件にも適用可能だと指摘する。2025年9月、米政府が半導体・半導体生産技術の対中輸出規制対象にネクスペリアを追加したことを受け、オランダ政府はウィングテックによる経営権行使を禁止し、CEOの張学政氏の職務停止を命じた。ウィングテックは支配権回復のため、オランダと中国広東省の法廷で係争中だ。
新規定の内容
新規定では、投資先政府の法規制リスクや法的トラブルの可能性を勘案し、国ごとに政策対応を決める方針だ。さらに第25条では、外国の組織や個人が中国企業との正常な取引を妨害したり、差別的な措置を取った場合、関係省庁が貿易・投資の制限・禁止などの対抗措置を取ることを明記。ネクスペリアのような事案に中国政府が介入する余地を残した。
中国企業による対外直接投資は「走出去」と呼ばれ、かつて政府も後押ししてきたが、10年代半ば以降、IT分野で世界トップクラスの競争力を獲得し、保護すべき技術やデータが増えたことから、監督強化へとかじを切っている。



