中国政府は、対外投資に対する監督を強化する新たな規定を発表した。これは、先端技術の海外流出を防ぐとともに、外国政府による法規制リスクにも対応することを目的としている。特に、米メタによる中国発のAI企業買収案件が、この動きを加速させる契機となった。
新規定の概要
新規定の第13条では、国家安全に関わる技術などの海外への移転・輸出を制限することを明記している。具体的には、国家が輸出を禁止している貨物、技術、サービスおよび関連データを、海外投資先企業へ持ち出したり、使用させたりすることを禁止している。さらに、技術者の海外投資先への派遣や研修、技術指導を通じて、輸出禁止対象となっている技術、サービスや関連データを移転することも禁じている。これは、中国が優位に立つ産業・科学技術分野を守ることに力点を置いた措置である。
企業の海外移転への対応
中国では、設立した企業をシンガポールなどの外国に移転するケースが増えており、新規定はこうした事例にも網をかける。第15条では、中国で設立した企業を外国に登記し、技術、資産、人材などを海外に移転する行為を規制している。これは、実質的に中国企業と判断されるケースにも適用される。
メタによるManus買収案件
中国政府は4月、米メタがシンガポールに本社を置く中国発のAIエージェント開発企業「Manus(マナス)」を買収する案件について、マナスに対し身売りを禁止する命令を出した。マナスは開発などのチームを中国からシンガポールに移転させる形で発足しており、実質的に中国企業に相当すると判断された。今回の規定は、こうした企業の海外移転事案についても規制を強化するものである。
外国政府とのリスク回避
新規定には、投資先の国の政府などと規制を巡ってトラブルが起きることを避ける狙いもある。第11条では、国務院の投資管轄部門および商務管轄部門が、「国民経済と社会発展の必要性」に加え「関係国・地域の投資環境の変化やリスク評価」も勘案して、対外投資政策を策定・調整・実施すると定めている。これにより、外国政府の法規制リスクにも対応する方針だ。
背景と影響
中国の対外投資は、現地生産のための工場建設などが増加しており、寧徳時代新能源科技(CATL)のハンガリー工場などがその例である。こうした動きに伴い、技術流出のリスクも高まっている。今回の規定は、中国の技術優位性を守りつつ、国際的な規制リスクにも対応するための包括的な措置と言える。今後の対外投資案件では、より厳格な審査と監視が行われることになる。



