兵庫県宝塚市で毎秋恒例となった「ぽっかぽか共生マラソン大会」が、障害の有無を超えて誰もが走る喜びを分かち合う場として注目を集めている。障害者とその家族を健常者ボランティアが伴走して支える手作りの大会で、共生社会の実現を目指す取り組みだ。
伴走者育成と練習会
8月初め、大会を主催するNPO法人「ぽっかぽかランナーズ」が市内で開いた練習会には20人が参加した。知的障害のあるランナーが遊歩道を軽快に駆けると、伴走の男性は「いいペースやね」と声をかけた。毎月2回の練習会は、障害者ランナーの練習と、伴走者を務める市民ボランティアの育成を兼ねている。
理事長の林優子さん(67)は「いろいろな人が笑顔で走り、応援し、違いを受け入れて共に生きる社会につなげたい。そのための活動」と話す。きっかけは、難治性てんかん「ドラベ症候群」の次男聖憲さん(32)が、2010年に特別支援学校高等部の校内マラソンで1位になったことだ。得意げな姿を見て「この子が輝けるものがあった」と感じたという。
伴走ボランティアの広がり
以後、聖憲さんの伴走者を務め、様々な市民マラソンに出場した林さんは、伴走者がいないために出場できない障害者が大勢いることに気づいた。「もっと多くの仲間とともに走りたい」との思いで、13年に同法人を設立。これまでに近郊から集まった会社員ら80人近くが伴走のノウハウを習得し、20年に大会の初開催にこぎつけた。
市内でエステ店を経営する長谷川輝実さん(53)もボランティア伴走者だ。過去にヘルニアで寝たきりになった経験があり、「一人で走れない人を支えたい」と7年前から練習会に参加する。伴走時は、障害者が急に停止したり、方向転換したりしないよう気を配る。そうした理解が深まったことで、「本人、その家族と喜びを分かち合う瞬間が一番うれしい」と語る。
足こぎ車いすの普及と今後の大会
同法人が最近力を入れるのは「足こぎ車いす」の普及だ。ペダルをこいで身体機能を向上させる器具で、希望者に貸し出している。40歳代で車いす生活になった同市の榎本匡笑さん(66)は、利用してから筋肉が鍛えられ「すごくペダルを回せるようになった」という。大会で数キロをこいで完走し「障害があっても前向きな気持ちでいられるようになった」と喜ぶ。
今秋で8回目になる大会は、11月22日に同市の武庫川河川敷で開催される。3歳以上なら障害の有無、年齢、国籍なども関係なく参加可能だ。近年は参加者が300人を超え、趣旨に賛同して参加賞として商品を提供する企業も増えている。「参加した健常者が『共生の意味がわかった』と言ってくれるのがうれしい。みんなが認め合うことが普通になったらいいな」と林さん。共生の価値が社会に定着することを願う。
スポーツを通じた共生社会の実現に向けた動きは各地に広がる。東京都大田区では2008年から「おおたユニバーサル駅伝大会」が開かれ、年齢や性別、障害の有無を超えてたすきをつなぐ。今年は約200人が参加した。横浜市では障害者と健常者が競う「インクルーシブ水泳競技大会」が22年から開催され、今年はアジアパラ競技大会の日本代表を含む約700人が参加した。



