ニホンウナギの完全養殖という半世紀にわたる夢の実現に向けて、大きく前進した。完全養殖されたニホンウナギが今年5月、世界で初めて一般向けに試験販売された。かば焼きが1匹5000円程度と、一般の養殖ものの約2倍と高いものの、味は遜色がないという朗報だ。日本の伝統的な食文化を守っていくためにも、さらなる技術開発に期待したい。
生態と養殖の現状
ニホンウナギの生態は、いまだに謎に包まれている面が多い。日本から南に約2000キロ・メートル離れたマリアナ諸島付近の海域で産卵し、孵化した後に日本の河川などにたどりつく。5〜15年間、日本で生息した後に海に戻る。
国産は99%以上が養殖だ。今夏は稚魚の豊漁で手頃な値段だったが、好不漁の波も大きい。一般的な養殖手法では、日本沿岸で捕獲した5〜6センチの稚魚のシラスウナギを半年〜1年半ほど育てて出荷している。だが、この60年余りでシラスウナギは10分の1以下の約18トンにまで減少した。
絶滅危惧種指定と国際的な規制強化の動き
すでに2013年には絶滅危惧種に指定されている。欧州連合は昨年の国際会議で規制強化案を提案した。否決されたものの、国際的に厳しい目が注がれていることを忘れてはなるまい。
資源保護と食文化を両立させるための切り札と期待されるのが、シラスウナギに依存しない完全養殖だ。人工授精で生まれたウナギを育て、成魚になった後に産卵させ、その卵から次の世代を育てるという循環を確立する技術だ。
研究開発の歴史と今後の課題
研究開発の歴史は古い。北海道大学でウナギの人工孵化が成功したのは1973年だ。政府の研究開発機関は2010年に世界初の完全養殖に成功し、一般向け販売へ研究を続けてきた。安定的な価格で食卓に届けば消費者の恩恵は大きい。
手頃な価格を実現するための課題はなお多い。卵から生まれたばかりのウナギの子どもは非常にデリケートで、飼育に適した専用の水槽や餌の開発を要するなど、多額のコストと手間がかかる。
政府は50年までに、国内の養殖をすべて完全養殖に移行させる目標を掲げている。政府の研究開発機関や大学、民間企業などは、餌や養殖方法を工夫して、さらなるコスト削減を進めてほしい。
種苗を巡っては、シャインマスカットなど、日本で開発された技術が国外に流出する事例が相次いだ。ウナギでは国際的な特許の取得や研究成果の厳格な管理などを併せて進める必要があろう。



