上野学園の小塩校長、「対話」と「伴走」で生徒の成長を支える
上野学園小塩校長、「対話」と「伴走」で成長支援

上野学園中学校・高等学校(東京都台東区)で、小塩明伸校長が就任2年目を迎えた。多様な職歴で培った多角的な視点を生かし、初年度は放課後の体験学習の充実や教員の授業力向上、広報活動などに注力。今年度は「上野」の立地を生かした大学、企業、商店街との連携や、AIを活用した非認知能力の養成にも努める方針だ。「対話」と「伴走」を軸とする学校運営を取材した。

「手は離しても目は離さない」距離感

小塩校長は横浜市立大学商学部卒業後、都立商業高校の商業科教諭としてキャリアを重ねる一方、東京都の教職員研修センターや学校経営支援センターなどの教育行政機関で施策策定や学校支援に携わり、都立高校2校の校長を歴任。2025年度から現職に就いた。

教育行政や学校経営支援の経験を通し、学校が教育活動以外に予算や人事も含め全体としてどう動くのか総合的に捉えられるようになったという。また、異なる職務での経験から対話を重視するようになり、「互いにウィンウィンの関係で事を進めるには、その都度相手の抱える『コンテキスト』を理解し、気持ちを通じ合わせることが大切」と語る。

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校長就任後、教員と話し合い、建学の精神である「自覚」を踏まえた学校の標語を「考え、つながり、つくる」に設定。「自覚」を「自己を深く見つめ、内面を知る体験であり、人として真の価値や可能性に目覚めること」と定義し、まず自分を「考え」、他者との「つながり」を見いだし、新しいものを「つくる」力へつなげたいとの思いを込めた。

「考えながら動き、動きながら考える」というモットーを合わせ、教員は生徒の最高の伴走者になろうと話した。「最初は近く寄り添い、走り出したら少し離れて見守り、悩みなどを抱えているならまた寄り添っていく。『手は離しても、目は離さない』という距離感が大事」と述べる。

体験学習の充実と授業力向上に注力

上野学園には「三つの『間』」があると感じているという。一つは「時間」で、少人数教育の中高一貫校として生徒をじっくり見守る環境。次に「空間」で、緑や文化豊かな上野周辺や台東区の街全体を「校庭」に見立て、博物館や美術館、動物園などの教育資源を探究活動に活用。そして「仲間」で、少人数ならではの深い絆や多様な学校行事を通して育つ。

中学校では「普通」「国際」「音楽」の3コースがそろい、普通・国際コースでも中学3年間で楽器を一つマスターするプログラムや、専門家によるコース横断の授業などで情操を深め、多様な価値観を理解する取り組みを行う。こうした環境が非認知能力の育成につながり、入学時の偏差値が50前後でも早慶上理レベルを目指せる「高い伸び率」の素地を作っていると考える。

「放課後チャレンジ講座」では、STEAM教育やアート、異文化理解などの専門家を招いた体験学習を実施。教員が3Dプリンターを活用する講座を企画し、静岡県の学校と連携して「未来の街」を考える内容で、互いの都市環境を比較でき興味深いものだったという。今後は実施時間を検討し、内容をさらに充実させたいとしている。

教員の授業力向上にも力を入れており、近年は難関大学への合格者が出るなど進学実績が上向き、保護者からの期待も感じられる。自身で授業を観察するほか、都立校の研修制度を参考に、若手教員による進学校への授業見学を開始。教員から「学びに向かう姿勢をより向上させるための指導法も学びたい」という要望もあり、さらに力を入れたいと話す。

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また、学校運営の「重心」として募集定員数の確保や受験者数の増加が欠かせないと考え、広報活動にも注力。1年間の手応えを踏まえ、今年度は学校説明会やSNSによる発信を強く打ち出す。

生徒の成長と今後の展望

昨年度、難関大学を目指す高3の生徒の小論文作成を助言した際、最初の厳しい指摘で距離を置かれたが、生徒が「絶対に合格したい」との思いを強め、再び指導を受けに来た。数か月間対話を重ねた結果、志望大学に合格。「高いモチベーションを保ちながら、自分を語る言葉を見つけ、それを文章に落とし込む力を付けることができた」と振り返る。

この経験から「対話」と「伴走」が生徒の成長を促す大切さを再確認し、今後も十分な対話ができるようタイムマネジメントに力を入れたいと述べる。

今後の取り組みとして、上野界隈を活用したフィールドワークに加え、商店街と連携した職場体験や近隣大学からの出張講義、企業との連携活動など、外部の視点を取り入れて教育活動をブラッシュアップしていく考えだ。また、数年前から導入している「AiGROW」という気質とコンピテンシーを可視化する分析ツールの活用を強化し、行事などの活動前後でデータを集めて変容を可視化し、内容改善や新企画に役立てる計画。

受験生や家族へのメッセージとして、「本校生徒を始めとする若者には、さまざまな経験を経て最終的に『幸せ』になってもらいたい。そのために、自ら何かに気付き、力を付け、夢の実現に向かってしっかり歩む人になってほしい」と語り、その場が上野学園であるという思いで生徒と関わっていくと締めくくった。