シニア世代の学びの場「奈良シニア大学」とは
奈良シニア大学は、55歳以上を主な対象とした民間の生涯学習施設である。「大学」と名乗っているが、学校教育法や大学設置基準に基づく一般的な大学ではない。しかし、一般教養講座や選択科目講座に加え、イベントやサークル活動も充実しており、シニア世代が学びと交流を通じて学生生活のような時間を楽しめる場となっている。
入学試験はなく、入学資格は「知的好奇心あふれる方ならどなたでも」としている。入学金は2万2000円、授業料は月額1万4300円で、他の習い事と大きく変わらない。入学者は毎年増え続け、運営は黒字を更新し続けているという。
運営者が語る「大学」という名称の効果
運営する一般社団法人日本コミュニティカレッジの代表、矢澤実穂さんは次のように語る。「普通のカルチャーセンターではなく、大学という名前に惹かれて、男性は通いやすいんだと思います。あとは『妻や子どもに、ずっと家でテレビを観てるんじゃなくて、外に出てよと言われたから来た』と話される方もいます」。
人生100年時代と言われる今、年齢を重ねると社会での役割もライフステージも変わる。定年退職などで会社という所属を離れた男性にとって、「大学」という新たな学びの場は、第二の居場所として機能しやすいのかもしれない。
90歳男性の挑戦:ドローン資格取得への意欲
5年前から通っているという90歳の男性は、前かがみの身体で目線を上げ、こちらを見てニッと笑った。「私は昔、商社に勤めててね。人生、仕事ばかりでした。すぐに就職してしまったから、学生の頃は学びきれなかった後悔もありました。今はここで、知らないことをたくさん学べるから、うれしいね」。
所属サークルを尋ねると、満面の笑みで「ドローン部」と返ってきた。続けて「夏にドローンの資格を取る予定です。これがなかなか難しくてね」と、ワクワクした気持ちを隠せない表情で語った。
課外授業と健康維持への取り組み
午後は課外授業で、奈良の史跡や博物館へ歩いて向かうという。その足取りは年齢を感じさせないほど軽かった。そばで話を聞いていた矢澤さんが、男性についてうれしそうに語る。「彼は最寄りの近鉄奈良駅からここまで、健康のためにいつも15分くらい歩いて来るんです。すごいですよね。……あら、(男性の)リュック、開きっぱなしだわ!」。
核家族化が進む現代で孤独や不安を感じるシニアも少なくないはずだが、筆者が見た活発な彼らに悲壮感はまったく感じない。なぜ、シニア学生らは民間の「学びの場」にのめり込むのだろうか。
多彩な活動と人間関係の課題
活動は多岐にわたる。写真は20年に一度開催される伊勢神宮の式年遷宮に伴う伝統的な民俗行事「御木曳行事」に参加・研修を行った時のものだ。一方で、時には人間関係のトラブルもあるが、それも含めてリアルな学生生活を体験できる場となっている。
平均74歳の学生約350人が集うこのシニア大学は、人生後半の学びと出会いの場として、参加者に新たな生きがいを提供している。



