奈良県にある「奈良シニア大学」には、平均年齢74歳の学生約350人が在籍し、熱気あふれる学びの場となっている。多彩な講師を招いた講義に加え、学生同士の交流も盛んで、人生後半での新たな出会いや成長を実現している。
飲み会で深まる親睦
同校ではサークル活動の一環として、「放課後授業」と称した学生主体の飲み会が自主的に開催され、参加者同士が親睦を深めている。ある80代の男性は「それぞれバックグラウンドがある人たちですが、素性や経歴はほとんど聞かないです。共通の話題があるから盛り上がるんです。『今日の講義のここは面白かったな』とか、史跡探訪した時のこととか。この年で、飲み友達ができるなんて思いもしませんでしたよ」と語った。
身だしなみの変化とコミュニケーション効果
仲間との出会いにより、学生の身だしなみにも変化が現れるという。シニア学生を見渡すと、小ぎれいな格好をしていることに気づく。矢澤さんは「最初はジャージで来ていた方が、いつの間にかポロシャツと綿パンでさわやかに変身して受講されるようになりました。周りが綺麗にしてるから、自分も変わろうって思うみたいです」と説明する。
また、コミュニケーションが苦手で人と関わることを嫌がる人も入学するが、午後の選択授業では先輩学生が新入生に積極的に話しかけるという。そのおかげで入学者が孤立しにくい雰囲気が生まれている。関西人ならではの「ちょっとしたおせっかい」な性質が、学生間でマイルドな相乗効果を生んでいるように感じられる。
存在意義とつながりの場
ある男性学生は、奈良シニア大学のイベント実行委員という肩書きが入った名刺を誇らしげに手渡してくれた。人によってはサークルの世話係や文化祭の実行委員を任されることもある。定年退職で「会社」という看板を失った彼らにとって、「自分はこういうものです」と伝える手段は希少だ。「誰かの役に立って、自分の存在意義を見出せることが大切なんだと思います」と矢澤さんは語る。
奈良シニア大学が求められる理由
毎週1回はおしゃれをして外に出ること、知らないことを学ぶこと、人に頼られること、そして誰かとつながれること――。この4つの循環が、奈良シニア大学が求められる理由である。同様の取り組みは大阪市内で隔週金曜日に開講する「大阪シニア大学」でも行われ、講義や課外活動が活発に展開されている。



