不登校生徒8割が復帰する鎌倉の中学「一斉授業」を手放した理由
不登校生徒8割復帰の中学 一斉授業を手放した理由

小・中学校の不登校児童生徒数は約35万4000人に上り、12年連続で増加し、2025年時点で過去最多を記録した。こうした状況を受け、不登校の子どもたちが通える学校が全国に広がっている。文部科学省が認定する「学びの多様化学校」の一つ、鎌倉市立由比ガ浜中学校(御成中学校分校)では、不登校経験者の8割以上が登校するようになった。教育ライターの佐藤智氏がその実態に迫った。

「学校に来られただけで100点」

由比ガ浜中学校は、江ノ島電鉄由比ヶ浜駅から徒歩2分の場所に位置する。校舎の前を江ノ電が通り抜け、電車好きの生徒は2階の窓からその様子を飽きずに眺めているという。同校は鎌倉市内全域から不登校を経験した生徒が通う「学びの多様化学校」だ。学びの多様化学校とは、不登校やその傾向にある児童・生徒のために設置され、文科省から特別な教育課程編成が認められている学校。授業時数は一般的な学校より約25%少なく、由比ガ浜中学校では起立性調節障害など朝の起床困難に配慮し、登校時間を午前9時30分としている。

定員30名程度のところ、2026年度の生徒数は34人。前年度に14人が卒業し、今年18人が入学した。全員が小学校や中学校で不登校を経験している。小学校6年間ほとんど登校しなかった生徒もいれば、週1、2回欠席していた生徒もいる。しかし、由比ガ浜中学校に入学・転入すると、8割以上が登校するようになる。

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教室を飛び出して自然、大人、社会を学ぶ

同校では、一斉授業を手放し、生徒主体の活動を重視している。生徒たちは「学校でどんなことをしてみたい?」という質問に「学校に泊まりたい!」と答えた。宿泊学習当日、生徒たちの要望でゲーム大会が行われ、夜には近隣で買った夕食を持ち寄った。多くの子がマクドナルドを選び、友達と笑いながら食べた。夜は布団を並べて夜遅くまでおしゃべりをした。スタッフ(同校では教職員を「スタッフ」と呼ぶ)は「せっかくだから、もっと特別な体験を」とも思ったが、生徒たちは「いっぱい思い出ができた!修学旅行みたいだった!」と目を輝かせた。

友達と「ふつう」に過ごすこと。これが由比ガ浜中学校の生徒たちの求めたことだ。大人はさまざまなお膳立てをしたくなるが、不登校で友達と過ごす経験が少なかった生徒たちにとって、仲間と当たり前に過ごす日常こそが心から求めているものだった。

「そろえない」学校での成績は?

分校長の岩田明先生(生徒から「リーダー」と呼ばれる)は、「休みたいときはすすんでしっかり休もう」と伝え、「登校率を上げることを目標にもしていません」と話す。それでも多くの生徒は由比ガ浜中学校に来ることを選択する。同校では「そろえる」ことを手放し、個々のペースを尊重。成績評価も一般的な学校とは異なり、生徒の成長を多面的に評価する仕組みをとっている。

「うちの子はひきこもりになっていたと思う」

保護者からは「この学校がなければひきこもりになっていた」との声が聞かれる。不登校でも友達が殻を破ってくれたケースも多く、大切なのは「6年間」「3年間」といった期間ではなく、一人ひとりに合った学びの場を提供することだと岩田先生は強調する。

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