麗澤大学工学部教授の宗健氏は、変化の激しい時代を生き抜くための進路選択について、「数学が得意だから理系、苦手だから文系、という決め方はもう時代に合っていない。むしろ数学が苦手でも理系に進んだほうが、卒業後の選択肢は広がる」と指摘する。その背景には、私立大学の大幅な削減計画や、受験科目と入学後の学習内容の乖離がある。
私立大学250校削減の現実
文部科学省の有識者会議は、2040年に向けた私立大学の在り方を再定義する議論を進めている。2021年に62.7万人だった大学進学者数は、2040年には約46万人と27%も減少すると予想される。これにより、地方の小規模大学の存続が危ぶまれる。さらに、私立大学の分野別学生比率の偏りも問題視され、理学2.3%、工学12.0%、農学2.1%と理工系の割合がOECD平均を大幅に下回っている。
2026年4月23日の財政制度等審議会では、私立大学250校規模の削減という数値目標案が示され、大きな話題となった。既に私立大学の過半数(約53.2%)が定員割れしている状況で、この削減案は荒唐無稽とは言えない。
「数学が得意なら理系」の前提が古くなった理由
多くの家庭では、文系・理系の選択が数学の得意・不得意で決まる。しかし宗氏は、コンピュータやソフトウェアの進歩により、学生に求められる数学力が変化していると指摘する。大学受験の数学科目と入学後の学習内容は必ずしも直結せず、トップ校の入試は選抜のための能力テストの色合いが強い。例えば東大理科三類(実質医学部)の二次試験では高度な数学が出題されるが、臨床現場で直接数学を使う場面は少ない。
理系進学のメリット:出口の違い
宗氏は、理系を勧める理由として「出口」の違いを挙げる。機械・電気・電子分野では大学院進学が当たり前となり、卒業後の就職や研究の選択肢が広がる。また、数学が苦手でも理系に進める分野が存在する。一方、文系学部でもデータ分析などで数学を使う機会が増えており、数学の重要性は文理を問わず高まっている。
受験は「入口」に過ぎず、入学後に必要なスキルは変化する。宗氏は「数学が苦手だから文系」という従来の考え方を見直し、将来のキャリアを見据えた学部選びの重要性を強調している。



