鎌倉国際文理、大学と連携し緑色蛍光たんぱく質の実験講座を実施
鎌倉国際文理、大学と連携し蛍光たんぱく質の実験講座

鎌倉国際文理中学校・高等学校(神奈川県鎌倉市)は、系列の鎌倉女子大学と連携した研究体験ができる「高大連携講座」を昨年度から実施している。最先端の科学的知見に触れて生徒の関心を高める狙いがあるという。今年度の共学化に先駆けて進めてきた理数教育強化が、着実に成果を出しつつあるようだ。8月26日に開かれた講座を取材した。

隣接する大学の本格的な設備をフル活用

この日の講座のテーマは「緑色蛍光たんぱく質UnaG(ユーナジー)を分析してみよう」というものだ。「UnaG」とはニホンウナギの筋肉に含まれるたんぱく質で、青い光に反応して緑色の蛍光を発する。2009年に発見され、13年に分子構造が解明されたばかりだ。講座では、実際にウナギから筋肉細胞を取り出し、高校ではなかなか扱えないという「倒立型蛍光顕微鏡」という器具でUnaGの蛍光を観察する実験を行った。

指導するのは、伊藤太二教授(家政学部管理栄養学科)だ。午後1時、受講する高校生9人が自分の校舎から道を1本隔てた同大学岩瀬キャンパスの理科教室を訪ねると、伊藤教授と助手を務めるゼミ生4人が迎えた。伊藤教授は講座の概要と注意事項を説明し、実験を開始した。

クリーンベンチでの無菌操作を体験する生徒たち

まず作業台の上で、丸ごと1匹のウナギをはさみで輪切りにして約3センチ幅の肉片を取り出し、皮を剥いで約1センチ角に切り分け、シャーレへ入れた。伊藤教授はそれに下から青い光を当て、緑色の蛍光を生徒とともに確認した。ここから作業の場を、無菌空間を作り出す「クリーンベンチ」のブースに移す。肉片を洗浄用の液で数回洗い、メスでさらに細かい切片にする。これらの作業は、ゼミ生が手本を示した後に生徒が一人一人ブースの前に腰掛け、少しずつ分担した。

切片は樹脂製の試験管に移し、遠心分離器に3回かけて不要な残留物を取り除いた。ここまで1時間半ほどかかったが、生徒たちは終始、教授の手元や実験体から目を離すことなく、作業に集中して取り組んでいた。

実験の合間にゼミ生との懇親会も

その後、酵素で切片の細胞を分散させるため、「インキュベーター」という機器に入れて温度を37度に保ち、1時間ほど待機する時間ができた。その間、ゼミ生と生徒は別室に移動し、お菓子と飲み物で懇親会を行った。生徒たちは、最初は沈黙気味だったが、ゼミ生のリードにより徐々に対話が始まった。ある高1生の「管理栄養士志望ですが、どんな就職先がありますか」との質問に、ゼミ生は「公務員や病院など幅広いですよ」と回答。続いて同大学に進学予定の高3生が、「文系科目が得意ですが、栄養学科で生かせることはありますか」と聞くと、ゼミ生は「文章力やスライド作りの力は大事」と応じるなど、会は和やかに進んだ。

午後3時半頃、講座が再開。伊藤教授はインキュベーターから試験管を取り出し、細胞が液中に分散して濁って見える様子を示したあと、培養液を注いで酵素を洗い落とす作業や、顕微鏡用のシャーレに移す作業を生徒に体験させた。そして試料を顕微鏡で200倍に拡大し、生徒とともに細胞の形や蛍光を発する様子を観察した。最後に伊藤教授はプロジェクターでまとめの動画を流し、「蛍光」の定義や原理、UnaG発見の経緯を説明。さらに、血液に含まれるビリルビンと反応して蛍光を発する仕組みや、UnaGが筋肉のエネルギー産生に関わる可能性があることも紹介し、午後4時過ぎに講座は終了した。

知らなかった事実や教科書との符合にワクワク

今回の講座について、伊藤教授は「先端的な知見に触れてもらうため、ゼミの実験をあえて簡略化せず取り組みました」と語る。「器具を実際に使う体験も重視し、普段の数倍の時間をかけて作業を分担してもらいました。ゼミ生にとっても、生徒に説明することで自らの理解が深まり、有意義な講座だったと思います」

参加した高1の近藤楓路杜(ふじと)君は理科実験が好きで、「本格的な器具を扱えたのがうれしかった」と語る。「顕微鏡で見た細胞の様子が、教科書の画像と一致していてワクワクしました。最後の動画では『UnaGの研究が生物の絶滅を救う可能性』も語られていて、意外なつながりにも驚きました」と、目を輝かせた。近藤君は、仲間を集めて「eスポーツ同好会」を立ち上げ、将来は文筆業を夢見るなど興味は幅広い。「SFの要素を取り入れて小説を書きたいと思っており、今日の体験も役立つと思います」

同じく高1の倉谷映里奈さんは栄養士の仕事に関心があり、同大学への進学を考えている。今回の講座では、まず「光るたんぱく質がある」という事実に驚いたという。「人間の体にも全然知らない仕組みがあるんだろう、と探究心が膨らみました」。また、ゼミ生との懇親会で授業の時間割を見せてもらい、大学生活のイメージが得られたという。「人によって時間割が違うのが新鮮で、『大学2年が一番大変』と言うのも参考になりました。今後もこうした講座があれば参加したいです」

数年来の理数教育強化の取り組みが実る

碇郁夫校長代理は講座の狙いについて、「大学の学びを先取りするというより、その一端に触れて『すごい』とモチベーションを高めてもらいたい」と語る。昨年度の講座は参加者が数名だったが、今回は定員を大きく超える応募があった。「参加した生徒から話を聞き、興味が高まったのでしょう」。今年はこのほか、同大学に今年度新設された「教育メディアクリエーション学環」と連携し、3Dプリンターなどのデジタル工作器具を使ったものづくり講座も開催した。また、他大学との連携も進め、幅広い体験機会を設ける考えだ。

さらに来年度からは、高校の授業終了後に同大学で講義を受けられる制度を導入する。「鎌倉女子大学は2029年度に共学化し、『鎌倉大学』となります。それ以降に進学した生徒は、高校期に受講した分を大学の正規の取得単位に算入できます」

三島一洋教頭によると、同校では数年前から理数教育の強化を進めてきたという。「中学の数学で高校の『数学Ⅰ』を履修し、理科でも高校で扱う実験や理論面の学習を取り入れています。高校では文系・理系を問わず、2年まで数学と理科を履修します」。一方で、取りこぼしを防ぐ配慮も行っている。数学は3段階の習熟度別クラスとし、上位クラスは高度な内容の教材を使用。下位クラスは通常の教科書をベースに、丁寧な解説と反復練習で着実な定着を図る。ICT(情報通信技術)も活用し、立体を3D画面で見せたり、関数のパラメータによるグラフの変化を画像で示したりして、理解の助けにしている。

これらの取り組みが実り、今年度は同校で初めてお茶の水女子大学、国際教養大学への合格者を出した。碇校長代理は「今の高3生には医学部志望もいます」とうれしさをにじませる。同校のこうした変化は地元でも意識されているようだと、三島教頭は実感している。「学校説明会で『授業についていけるでしょうか』という質問も出るようになり、丁寧なサポートの重要さを感じています」。碇校長代理はこの言葉を継いで、「6年間しっかり伸ばしますので、安心してお預けいただきたい」と呼びかけた。