大阪府高槻市の住宅街で、騒音を巡って隣人同士が互いに損害賠償を求めた訴訟で、大阪地裁は8月、騒音被害を訴えた女性の請求を棄却し、逆に相手の男性をにらみつけるなどの威嚇行為をしたとして、女性に40万円の支払いを命じた。判決は確定している。
発端は2019年の引っ越し
トラブルは2019年3月、男性が高槻市内の閑静な住宅街に引っ越してきた後に始まった。警察官が何度も男性宅に駆けつけるようになり、「騒音」を理由にした通報があったと説明された。
判決や訴状によると、道を隔てて向かいの民家に住む女性は、早朝に男性宅から子供を叱る声や掃除機の音が聞こえ、騒音に悩まされるようになったという。ただ、男性は女性が主張する「騒音」を出している心当たりはなかった。
さらに2021年9月には、騒音への苦情がつづられた文書が郵便受けに投函された。文書は匿名だったが、女性が男性の家族を見かけると、窓を勢いよく閉めたり、にらみつけたりしていたことから、男性は一連の行為は女性の嫌がらせだと判断した。
双方の訴えと判決の内容
話し合いの場を設けることもなく訴訟に発展。女性は2024年1月、長年我慢してきた騒音でうつ病を発症したとして、男性に対して治療費など約146万円を求める支払い督促を簡易裁判所に申し立てた。男性側が異議を申し立て、地裁での民事訴訟に移行。その後、男性も女性による嫌がらせで精神的苦痛を受けたとして、慰謝料など220万円を求めて反訴した。
植野賢太郎裁判官は8月21日の判決で、男性宅から出た声や音について、「道路を挟んだ女性宅で、受忍限度を超える大きさで聞こえていたとは、にわかに想定できない」と指摘。音の大きさを示す客観的証拠もなく、男性の不法行為は成立しないとし、女性の訴えは退けた。
一方で、女性は主観的には騒音があったと感じていたとし、警察への通報が不当とまでは言えないと指摘。ただ、「強い不満をもったとしても、男性の家族をにらみつけるなどの威嚇は、著しく不相当」と判断し、女性に40万円の支払いを命じた。いずれも控訴せず、判決が確定した。
判決を受け、男性の代理人弁護士は取材に対し、「勝訴したとはいえ、トラブルが実際に解消されるかどうか分からない。女性には行動を改めてほしい」と話し、女性の代理人弁護士は「取材には応じられない」としている。
近隣トラブルの現状と専門家の助言
警察庁によると、「家庭・職場・近隣関係」を巡る全国の警察への相談件数は2025年に28万1726件だった。2015年の約22万件から増え、近年は30万件前後で推移している。
住宅購入前の近隣トラブルの予防調査を行う「トナリスク」(東京)が、戸建て住宅を購入した経験がある30~40歳代の既婚者1050人を対象に行った調査では、近隣トラブルで困った経験が「ある」と答えたのは、全体の22.9%だった。トラブル内容は「騒音や生活音がうるさい」が最多だった。
同社の西俊介社長(36)は「普段から挨拶を交わし、どんな家族が住んでいるのかを知っておくことが大事。お互いの理解が深まれば同じ音でも迷惑と感じにくくなる。苦情があれば無視や口論はせず、事情を丁寧に説明する姿勢を心がけてほしい」と話す。