作家・書評家の印南敦史氏は、著書の中で「地頭の良さ」の正体を「動的知識」と「静的知識」の違いにあると指摘する。両者にはもう一つ重要な差があるという。「なにもない状態からアウトプットすることができるか」である。
ヒントも問いかけも存在しないゼロベースの状態から知識を再構築できるのが「動的知識」であり、そうした状態でのアウトプットが困難なのが「静的知識」の特徴だ。この「ヒントもない状態でゼロから知識をアウトプットし、広げていく」行為は、学習科学で「アクティブリコール(Active Recall)」と呼ばれる。
アクティブリコールが知識を動的に変える
アクティブリコールとは、受動的に情報を眺めるのではなく、能動的に記憶から情報を引き出す学習方法。具体的には「教科書を読む」のではなく「教科書を閉じて自分で説明してみる」、「ノートを見返す」のではなく「何も見ずに書き出してみる」といった行為だ。同氏は「こうした行為が、知識を動的なものへと変えていく」と述べている。
一定の勉強を積んだ人は、ヒントのない状態でも知識をアウトプットできる。「動的知識」とは「ヒントがなくても、ゼロからでも再現できる知識」を指す。
ビジネス社会に必要な動的知識
注目すべきは、動的知識がビジネスパーソンの武器になるという主張だ。「社会に出てから使うことはない」と批判されがちな「明治維新」の知識さえ、ビジネスに応用できるという。例えば、自社を新体制へ移行させたい時、明治維新がなぜ成功したかを分析することは実践的なヒントになる。
260年以上続いた江戸幕府という巨大旧体制が短期間で解体され、近代国家へと生まれ変わった理由。そこには組織改革に通じる本質が詰まっている。同氏は具体例として「明治維新が成功した背景には、『外圧(ペリー・黒船)という危機感の共有』があった」と挙げる。
これを会社経営に翻訳すれば、「市場環境の激変や競合の台頭という外部要因を、組織全体で危機として可視化し共有することが、変革の起爆剤になる」という示唆を得られる。トップが一人で「変わらなければ潰れる」と叫んでも組織は変わらないが、黒船のような「動かしようのない現実」を全員が直視した時、初めて変革のエネルギーが生まれる。



