施設出身者が指導員に
滋賀県長浜市余呉町にある不登校児童・生徒の自立支援寄宿型施設「子ども自立の郷ウォームアップスクールここから」で、かつて入所していた安藤姫香さん(25)がボランティア指導員として活動している。理事長の唐子恵子さん(70)らと共に、悩みを抱える子どもたちと共同生活を送る安藤さんは、中学から高校までの約5年間を同施設で過ごした経験を持つ。
自身の不登校経験
安藤さんは長浜市出身。小学校高学年から学校に行くことが苦痛になった。「毎朝、制服を着ると急におなかが痛くなって、動けなくなった」と振り返る。また、性に対する心の変化もあり、「自分は女性じゃないんだ」と長く感じていた。テープで胸をぐるぐる巻きにし、髪形や服装、言葉遣いも男子に似せていた。周囲に否定されるほど心を閉ざし、「男に負けたくない」と意地を張っていたという。
施設との出会い
中学1年の時、母親が同施設が校舎内で開いていたカフェのチラシを目にし、安藤さんは誘われるままに余呉の山あいへ向かった。カフェで食事を終えた頃、母親が突然泣き始めた。母親が誰かを頼ろうとここに来たのだとわかり、一緒に涙を流した。その光景を店の奥で見ていた唐子さんが「ちょっとしゃべろうか」と声をかけた。
共同生活での変化
中学2年の5月に入所し、高校卒業まで同施設で過ごした。「誰も信用しないでおこうと思ったけど、みんなが大切に思ってくれていることが日に日に分かるようになった」と語る。10人を超える共同生活の中で、男性願望を否定されたことは一度もなかった。当時いた女性指導員に「男の子ができること、女の子しかできないこと。性別で得意なこともあれば不得意もある。人はそれぞれだけど姫香は、姫香でしかないんだよ」と言われ、気持ちが楽になったという。
日常のあいさつが心を開く
「ただいま」「お帰り」「おはよう」「おやすみ」といった日常のあいさつや、ちょっとした気遣いに込められた優しさ、共同生活で積み重ねた仲間との信頼が、心の平穏につながった。高校3年生になる頃には、男性願望はなくなっていた。
指導員としての決意
昨春、仕事を辞めて指導員になり、住民票も施設に移した。「木の階段、廊下、教室、全てが心地よくて。今でも一番落ち着ける場所なんですよ」と笑顔で語る。立場を変えた今、「甘えたいなら甘えさせる。反発したいならさせてあげる。私がしてもらったように、子どもたちの気持ちを全部受け止められる指導員になります」と決意を新たにしている。



