北海道公立小学校教諭で公認心理師の山田洋一氏が、現代の教室で起きている変化と個別支援の実情を解説する。ある小学校3年生の教室では、朝の会直前にフードを深くかぶって机に突っ伏す男の子がいる。担任が声をかけても反応は薄く、周囲の子どもたちは心配しながらもどう接すればいいか戸惑っている。別の席ではタブレットを開いたまま授業準備に入れない子、休み時間にある友達に固執して毎日のようにからかいトラブルになる子もいる。登校と同時に保健室に行き、午前中いっぱい眠る子もおり、深夜まで動画サイトを視聴していたという。こうした光景は特別なものではなくなっている。
数字以上に感じる現場の困難
文部科学省の調査によれば、通常学級に在籍する児童生徒のうち「学習面又は行動面で著しい困難を示す子供」は小学校で10.4%、中学校で5.6%とされる。しかし、中学校で状況が改善されたわけではない。不登校の割合が小学校で2.1%に対し、中学校では6.7%に上るからだ。現場の教員の体感は数字以上で、「授業に集中できない」「友達との距離感がつかめない」「刺激に敏感で教室にいられない」「SNSの友人グループのトラブルから学校に来られなくなる」など、子どもたちのニーズは多様化している。
個別支援が求められる理由、「同じ支援」では届かない
従来の一斉指導では対応しきれない子どもたちが増えている。例えば、発達障害の特性を持つ子、家庭環境に課題を抱える子、精神的な不調を抱える子など、背景はさまざまだ。同じ「授業に集中できない」という行動でも、原因は注意力の偏り、感覚過敏、睡眠不足、家庭でのストレスなど様々で、一律の支援では効果が薄い。山田氏は「一人ひとりの状態に合わせた個別支援が不可欠だが、教員一人で対応するには限界がある」と指摘する。
現場で進む実践“個別最適化”はこうして行われている
一部の学校では、個別支援計画の作成や、特別支援教育コーディネーターを中心としたチーム支援が進んでいる。具体的には、朝の会前に個別に声かけをしたり、タブレットの使い方を段階的に教えたり、休み時間の過ごし方を一緒に考えるなどの取り組みがある。また、スクールカウンセラーや外部の専門家と連携し、保護者と情報共有を行うケースも増えている。山田氏の学校では、週に1回のケース会議を設け、気になる子の情報を共有し、支援の方向性を話し合っているという。
これからの学校に必要な視点「個別支援は当たり前」へ
山田氏は「個別支援は特別なことではなく、当たり前の教育の一部になるべきだ」と強調する。そのためには、教員の負担軽減や専門性の向上、さらには学校全体で子どもを支える体制づくりが必要だ。また、保護者や地域との連携も欠かせない。多様な子どもたちが安心して学べる環境を整えることが、これからの学校に求められている。



