台風シーズンになると、SNS上では「台風にもかかわらず出社しろと上司から言われた」「時代に遅れたブラック企業だ」といった投稿を目にするケースが多くあります。テレワークに適さない職種であることや、従業員の安全を重視して自宅待機を命じれば、売り上げの減少などにつながる可能性があることなどを理由に、台風が接近するたびに、従業員に自宅待機を命じるべきか悩む企業も多いのではないでしょうか。
そこで今回は、台風のような非常時にどのような判断を下せばよいのかを社労士が解説します。
「台風でも出社しろ」は違法なのか
実は台風の日に出社させるのは、違法ではありません。「台風の日に出社させてはならない」という労働関係の法令はないからです。
労働契約法第5条には、企業(使用者)に対して従業員の生命や健康を守る安全配慮義務が定められています。しかし、原則として通勤中は使用者の指揮命令下にないため、会社は休業などの対応を除き、安全配慮義務を負わなくて済むのです。
とはいえ、台風の日に出社を強要する会社はそれほど多くはないでしょう。店舗の販売員や工場の製造スタッフのように在宅勤務ができない職種を除き、多くのビジネスパーソンはリモートワークができるからです。そのため、出社の有無は、個人の判断に任せる企業が多いのではないでしょうか。
出社の有無を個人の判断に任せる理由
個人の判断に任せると聞くと、従業員側からは「会社として無責任だ」と受け取られるかもしれません。しかし、鉄道など通勤者が広範囲にいる企業では、通勤経路によって台風の日でも状況が異なることがあります。
「会社から自宅待機の指示があったものの、公共交通機関は動いており、雨風も大したことがなかった。これなら会社に行った方が良かった」という意見が出る可能性も考えられるため、企業としては判断を個人の選択に委ねざるを得ない面もあります。
さらに公共交通機関が動いているにもかかわらず、企業側の判断で休業を命じた場合、企業は休業手当を従業員に支払わなくてはなりません。企業側が全従業員の通勤経路の状況を把握するのは現実的ではないため、従業員の判断に任せるのが一見「合理的」と言えるのです。
「自己判断」の過信も禁物
自己判断に任せる場合も、過信は禁物です。企業は従業員の安全を確保するため、台風の状況に応じて適切な情報提供や指示を行うことが求められます。BCP(事業継続計画)体制を整え、従業員の安全と事業の継続を両立させるためのルールを事前に決めておくことが重要です。
台風時の出社判断は、法令違反の問題ではなく、従業員の安全と事業継続のバランスをどう取るかという経営判断の問題です。企業は、従業員の安全を最優先にしつつ、事業への影響を最小限に抑えるための体制づくりが求められています。



