東大生のうつ増加、背景にヘリコプターペアレントの過干渉 親子関係の歪み
東大生のうつ増加、背景に過干渉な親子関係の歪み

東京大学の学生におけるうつ病の増加が指摘される中、その背景に過干渉な「ヘリコプターペアレント」の存在があることが、教育関係者の間で注目されている。一般財団法人ドラゴン桜財団代表理事で、『東大うつ』(ベスト新書)の著者でもある西岡壱誠氏は、自身の観察から、一部の東大生が「親の作品」として育てられ、自己決定能力を奪われた結果、精神的な不調に陥るケースがあると指摘する。

親の「最高傑作」としての子ども

西岡氏によれば、絵画や彫刻のように、親が子どもの人生を自らの手で形作り、磨き上げ、世間に披露する感覚で子育てをする親がいるという。完成後も、その作品が傷つかないよう、評価が下がらないよう細かく管理し続ける。本来、子どもは独立した人間であるはずが、いつの間にか親のライフワークにおける「最高傑作」として位置づけられてしまうのだ。

「東大うつ」の背景にある親子関係

ただし、西岡氏は「東大でうつになる人の親がすべてこのタイプだ」と決めつけることは否定する。東大生の親は多種多様で、子どもの自由を最大限尊重する親も、適度な距離感で支える親も多くいる。今回の指摘は、あくまで「東大うつ」に陥った一部の学生の背景に、こうした親子関係が存在するという限定的な観察にすぎない。

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自己決定の回復は可能

しかし、仮に「親の作品」として育ってきたとしても、そこから自分の人生を取り戻すことは不可能ではない。西岡氏の周囲には、強い期待を受けながらも、それを「自分の意志」へと再翻訳することに成功した友人が多数いる。例えば、東大入学後に本当にやりたい研究テーマを見つけ、初めて自分の足で歩き始める同期や、進学振り分けで親の希望と異なる学科を選び、自分の人生を引き受け直す友人などだ。

小さな選択の積み重ね

「親に与えられたレール」を「自分の選んだ道」に書き換える作業は時間がかかるが、確かに可能である。西岡氏は、自身が知るYさんの例を挙げる。Yさんは現在、今日着る服を自分で選ぶ、食べるものを自分で決めるといった小さな選択を、一日に一つずつ積み重ねている。長年「親の作品」として整えられてきた人生を、ゆっくりと「自分の人生」として引き受け直すための地道な練習だ。東大には学生相談所や精神保健支援室など、こうした歩みを支える機関も整備されている。

賢さを祝福に変えるために

「賢く生まれた」ということは、本来、本人にとっても親にとっても大きな祝福であるべきだ。しかし、それが「呪い」のように作用するのは、賢さそのもののせいではなく、賢さが過剰な期待のスイッチを押してしまう周囲の構造に問題がある。Yさんが続ける「自分で選ぶ」という小さな練習は、長い目で見れば、賢さを再び祝福として受け取り直すための最も重要な第一歩なのかもしれない。

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