大津市のグループが戦時下のウクライナの子どもたちを励まそうと手作り人形を贈る「さくらちゃんプロジェクト」が、活動開始から9月で3年半を迎えた。ロシアの侵略が長期化し、材料費や輸送費の高騰などの逆風が強まる中、メンバーは「少しでもやすらぎを与えられるよう、1体でも多く贈りたい」と話している。
発起人は人形作家の藤後さん
プロジェクトの発起人で人形作家の藤後俊子さん(81)は、今月12日に大津市比叡平の人形教室で、華やかなワンピースで着飾った女の子の人形22体を布で包み、箱詰めした。「無事に届きますように」との思いを込めながらの作業だ。
人形の名は「さくらちゃん」。サクラという言葉がウクライナでも浸透していると知り、名付けた。肩から下げたフェルトのポーチには「私はあなたが大好きよ。愛を込めて。日本より」とウクライナ語で書いた手紙を入れている。藤後さんは「もらった瞬間だけでも笑顔を取り戻してほしい」と願う。
きっかけは避難女性の講演
専業主婦だった藤後さんは、3人の娘の子育てが落ち着いた頃に人形作りを趣味で始めた。学校で洋裁を学んだ経験はないが、手を動かし続けるうちに上達し、30年ほど前には人形教室を開くまでになった。
プロジェクトを思いついたのは、侵略から1年たった2023年2月、大津市で開かれたウクライナ支援の会合で、日本に避難したウクライナ人女性ユリヤ・ボンダレンコさん(34)の講演を聞いたのがきっかけだった。戦渦に巻き込まれた子どもたちの窮状を知り、ボンダレンコさんに「私には何もないが、人形を作ることはできる。郷里に届けてもらえませんか」と声をかけた。
藤後さんはその日の夜から制作に取りかかり、10日後にボンダレンコさんの出身地であるチェルニヒウ州に向けて6体を発送した。同州は首都キーウの北にあり、ミサイル攻撃にさらされる夜は天が赤く染まり、鳴りやまない空襲警報の音におびえる子どももいるという。数え切れない数の子どもが人形を希望し、長い待機者リストができている。
1575体を贈り、バザーで輸送費を捻出
最初の6体を送り届けてから3年半の間に、15人の賛同者が活動に加わった。主に男の子向けにクマの人形も手がけるようになり、幼稚園や孤児院、福祉施設などに計1575体を贈った。藤後さんは「1500以上の笑顔が生まれたと思うと、本当にうれしい」と語る。
ウクライナからは礼状や写真が届く。ある写真には、がれきになった生家の前で人形を抱きしめる少女たちが写っていた。人形が「暗闇の中の光、曇ったまなざしを照らす宝物」になったとつづった手紙も届いた。藤後さんは自身のアトリエに写真を飾り、毎日眺めて原動力にしている。
ボンダレンコさんは「子どもたちの笑顔が消えてしまわないようにと、皆様が心を尽くし、毎日頑張ってくださっていることに心から感謝しています」とのコメントをSNSで寄せた。
メンバーは人形作りに支援者からもらった布を使い、余った布で作った小物をバザーなどで販売し、輸送費などを捻出している。バザーは、10月25日に京都ノートルダム女子大(京都市左京区)、11月3日に京都市国際交流会館(同区)とブランチ大津京(大津市)で予定している。クラウドファンディングで寄付も募る計画だ。小物(500円)1個でクマの人形1体、3個でさくらちゃん人形1体分の輸送費になる。藤後さんは「人形を待つ最後の一人に届くまで作り続けたい」と制作協力者も求めている。問い合わせは、藤後さん(080・1439・4455)。



