日本より過酷な英国鉄道の酷暑事情 冷房なし地下鉄は灼熱地獄、線路ゆがみでダイヤ混乱
2026年5月、ロンドンは5月として史上最高の35度を記録した。この異常な暑さは英国の鉄道網に深刻な影響を及ぼしている。冷房設備のない地下鉄車内は灼熱地獄と化し、線路のゆがみによる速度制限でダイヤは大混乱に陥った。在英ジャーナリストが現地の実情を詳しく報じる。
速度制限と減便でダイヤ混乱
ロンドンとスコットランドの大都市エディンバラを結ぶ東海岸本線では、通常なら時速約200キロで走行する区間に対して、約32キロという厳しい速度制限が設定された区間もあった。これは新幹線並みの高速区間を自転車程度の速度まで減速せよという異常な指令である。ロンドン・ノース・イースタン鉄道(LNER)は、猛暑下での長距離列車運行にあたり、エアコン性能が低い旧型車両「インターシティ225」の運用を削減し、日立製のクラス800/801「あずま(Azuma)」中心の運用に切り替えた。このため列車は減便され、5月23日から25日の3連休には速度制限と減便が重なり各地でダイヤが混乱した。LNERは列車の立ち往生などの重大問題は回避したものの、他の路線では運休や遅延が相次いだ。
地下鉄冷房化工事が生んだ皮肉
多くの乗客にとって耐え難い苦痛となったのは、皮肉にも「地下鉄の冷房化」工事が引き起こした出来事だった。ロンドンは世界で初めて地下鉄が開通した都市であり、その分インフラは老朽化している。地下鉄には地上に近い浅い部分を走る路線と、トンネル断面が小さい地下深くの路線がある。後者には現在も冷房付き車両が皆無である。通常時でもモーターの熱で車内は生暖かいが、そこに外気温の上昇が加わり、車内は耐え難い暑さとなる。かつては「熱気を電車が押し出すのでトンネル内は暑くない」と言われたが、もはやその効果は期待できない。筆者は連結面の窓を開けて顔を出すこともしばしばだった。
冷房付き新型車両導入へ
現在ロンドン地下鉄は、地下深い区間を走るピカデリー線に冷房付き新型車両を導入する準備を進めている。2026年末から2027年前半の運行開始を目指し、輸送力も約10%向上する見込みだが、車体が既存車両より長いためプラットフォームなどの施設改装が必要となる。そのため5月下旬の週末、ピカデリー線は部分運休し昼夜連続で工事を行った。しかし、運休区間の代行バスには冷房がなく、乗客はさらに過酷な状況に置かれた。
冷房工事で運休の地下鉄、代行バスは冷房なし
工事のための運休は週末の終日におよび、多くの利用客に影響を与えた。代行バスは冷房がなく、車内は蒸し風呂状態。地下鉄の冷房化は待望の改善だが、その過程で乗客に新たな苦痛を強いる結果となった。
英国の鉄道は日本以上に過酷な暑さに直面している。気候変動による異常気象が今後も続けば、さらなる対策が急務となるだろう。



