独身研究家の荒川和久氏は、日本人が「普通」に結婚できなくなった理由は、若者の「恋愛離れ」や価値観の変化ではなく、「普通のインフレ」が原因だと指摘する。かつて「1億総中流」と呼ばれた時代には、多くの人が「普通」に結婚し、家族を持つことができた。しかし、今やその「普通」は一部の上位層に限られるようになったという。
「普通のインフレ」が婚姻減・少子化の背景に
荒川氏によれば、「普通」とは大多数の人々が共有し、標準的と見なされるものを指す。1979年の『国民生活白書』では「中流意識が定着した」と公式に評価され、当時は経済成長期で、三種の神器(白黒テレビ、電気洗濯機、電気冷蔵庫)が全国の家庭に普及し、新三種の神器(カラーテレビ、クーラー、自動車)も夢から現実になりつつあった。夫妻と子ども2人の核家族が標準世帯とされ、一戸建てなどのマイホームが達成可能な目標だった。
しかし、現在ではその「普通」が普通ではなくなりつつあり、いわば「普通のインフレ」が起きている。これが婚姻減や少子化の背景にあると荒川氏は分析する。
結婚・出産できるのは「世帯年収が高い層」
荒川氏は、2014年から2024年までの10年間で顕著な変化があったと指摘する。客観的な数字として、結婚や出産ができるのは世帯年収が高い層に限られるようになり、中央値のレベルでは到底達成できなくなったという。特に2014年以降、この傾向が強まった。
「普通に恋愛して、普通に結婚して、普通に子どもを産み育てるという『普通』は一部の上位層に限られるようになりました。恋愛も結婚も家族を持つことも、今では『普通ではない』のです」と荒川氏は述べる。
「中間層」が細り、二極化する主観的な生活意識
荒川氏は、中間層が細り、主観的な生活意識が二極化していると指摘。かつては多くの人が「自分は中流」と感じていたが、現在では経済的な格差が拡大し、結婚や子育てに対する安心感が失われている。
「失われたのは『将来なんとかなる』という安心の共有です」と荒川氏は強調する。この安心感の喪失が、結婚や出産をためらう要因となっている。
皆婚時代の終焉と今後の展望
皆婚時代には未婚率が低く、出生数も多かったが、今やその「普通」は失われつつある。荒川氏は、この状況を打開するためには、経済的な格差を是正し、結婚や子育てが「普通」にできる社会を再構築する必要があると提言する。



