「50年に1度の大雨」が毎年発生する理由…異常気象報道のカラクリを専門家が解説
「50年に1度の大雨」が毎年発生する理由とは

「50年に1度の大雨」という表現が、近年の豪雨報道で頻繁に使われることに違和感を覚える人は少なくない。2017年の九州北部豪雨、2018年の西日本豪雨、2020年の球磨川氾濫など、毎年のように大規模な水害が発生しているからだ。東京大学大気海洋研究所気候システム研究系の今田由紀子准教授は、この矛盾の背景には統計上の限界と気候変動の影響があると指摘する。

「50年に1度」という確率の算出方法

気象庁は、地域気象観測システム「アメダス」で数十年にわたる観測データを蓄積している。ある地点で大雨が発生した場合、その地点の観測開始以降の全降水データから各年の最大降雨量を抽出する。100年分のデータがあれば、最大値が「100年に1度」、2番目の値が「50年に1度」の大雨と推定される。

しかし、今田准教授は「100年のデータで最大だった値が、500年のデータでも最大となる可能性がある」と指摘する。つまり、実際には500年に1度の大雨かもしれないのに、データの限界で過小評価されるケースがある。また、観測開始が遅く50年分のデータすらない地点では、そもそも50年に1度の確率を評価できない。

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データ補正の限界と3つの理由

データ不足を補うため、気象庁は「フィッティング」という統計手法を用いて確率を推定している。しかし、この方法にも誤差が伴う。今田准教授は、毎年のように「50年に1度」が使われる理由として3つを挙げる。

第一に、データのグループが異なる。同じ「50年に1度」でも、対象地域や期間が変われば別の事象を指す。第二に、情報を得やすくなった。過去と比べて観測網が密になり、大雨を捉える機会が増えた。第三に、直近数年に歴代トップ級の大雨が集中している。気候変動により極端現象の頻度が増している可能性がある。

近年の豪雨災害の実態

2017年の九州北部豪雨では40名が死亡。2018年の西日本豪雨では200名以上の犠牲者が出た。2020年7月の球磨川氾濫では80名以上が死亡し、同年6月の中国・長江氾濫(200名以上死亡)との関連も指摘されている。これらの災害はいずれも「50年に1度」と表現されたが、短期間に連続して発生している。

今田准教授は「『50年に1度』という言葉は、限られたデータから推定した確率にすぎない」と強調する。気象庁は特別警報の基準としてこの表現を用いてきたが、頻発する豪雨に対しては、統計的な確率表現だけでは不十分で、気候変動を踏まえた新たな警戒基準が必要かもしれない。

今後の課題

気候変動により極端気象の発生パターンが変化している中で、過去の統計に基づく確率表現は実態と乖離しつつある。今田准教授は、観測データの蓄積とともに、気候モデルによる将来予測を組み合わせたリスク評価の重要性を指摘する。また、メディアが「50年に1度」という表現を安易に使うことへの警鐘も鳴らしている。

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