10年の時を経て、大地震が再び熊本を襲った。発災から3日目の朝、息子は積めるだけの物資を車に詰め込んだ。
昨年、事故で大けがをした際、たまたま居合わせて救護に当たってくれた熊本在住の恩人に届けるのだという。長いリハビリを経て、ようやく仕事に復帰した息子。ずっと恩返しの機会を待っていたが、まさかこんな形になろうとは。
届けた物資と息子の思い
断水と停電の続く被災地に届ける品は、飲料水、乾電池、カセットコンロ、ウエットティッシュ、液体はみがき、パックご飯、カップ麺等々。決して十分でないことはわかっているが、「明日の百より今日の五十。早いに越したことはない」と息子は意気揚々と出かけた。
平時でも片道2時間はかかる。渋滞を見越し早朝に出発した息子からは、道中、被災状況のわかる写真が幾度か送られてきた。私は、更なる余震がないことを祈った。
安堵と拍子抜け、そして気づき
ようやく目的地に着くかと思う頃、先方から連絡が入った。「断水、停電、たった今解消しました」。私は安堵と同時に拍子抜けした。そして事実を知ったときの息子の表情を想像しておかしくなった。
またも時機を逸してしまった。だがそれもよしとしよう。息子が届けたいのはきっと物資だけではなかったはずだから。



