大阪市住之江区の治水施設「住之江抽水所」で今年6月の大雨により大型ポンプ6基が水没し、市は復旧までに3年かかるとの見通しを明らかにした。低湿地が広がる市南東部の平野区などを浸水被害から守る要の施設で、住民からは不安の声が出ている。
ポンプ水没の経緯と原因
市は8月31日、大型ポンプの復旧に向けた有識者会議を非公開で開催した。下水道の専門家らが被害の原因究明や再発防止策を検討し、年内に報告書をまとめる。
住之江抽水所は2000年に市が整備した。水がたまりやすい市南東部に降った雨水を、東西約12キロにわたって貫く「なにわ大放水路」を通じて抽水所まで流し、ポンプでくみ上げて大阪湾に流れ込む川へ排水する仕組みだ。
6基の大型ポンプは抽水所の地下約40メートルに設置されており、大放水路が雨水で満杯になっても、ポンプ室へは水が入らない構造だった。ところが6月26日の大雨では、大放水路とポンプ室をつなぐ管の一部が破損。そこから流れ込んだ雨水がポンプ室の仕切り壁を破壊し、ポンプが水没したとみられる。
同日は市内で1時間に83ミリの雨が観測された。市建設局の担当者は「想定を超える大雨で圧力がかかり、劣化した部品が壊れた可能性がある」と話す。
復旧の見通しと応急処置
大型ポンプは6基で1分間に計4500立方メートル(2リットル入りペットボトル225万本分)の雨水を排水できる特注品で、1基の高さは約10メートルという巨大さだ。市は仮に6基とも更新する場合、300億円が必要で、復旧までは3年程度かかると見込んでいる。
応急処置として、市は水没を免れた小型ポンプ2基に加え、仮設ポンプ6基を稼働させているが、排水能力は水没した大型ポンプ6基の合計の1%に満たないという。
平野区に住む男性(84)は8月28日、読売新聞の取材に「足が悪いので、千葉のような水害が起きたら、避難できるかどうかわからない」と不安を口にした。
今後の警戒と対策
市内では8月3日にも1時間に60ミリを超える雨が観測され、大放水路は2時間で満杯になった。市南東部で浸水被害は免れたが、9月以降も大雨への注意が必要となる。
市は気象情報をこまめに確認し、雨が強まった際は低い場所に近づかないようホームページで呼びかけている。1時間に20ミリを超える雨が予測される場合は市のX(旧ツイッター)で周知し、雨量に応じて市南東部を車で回って注意を呼びかける。大放水路のリアルタイムの貯留量は、「大阪市降雨情報」と検索すれば閲覧できる。
市は今後、壊れた6基の大型ポンプから使える部品を取り出して組み立て直し、少なくとも1基分を復旧させることを検討している。横山英幸市長は8月25日、市役所で記者団に「市民の不安に応えられるよう、可能な限り早く手だてを尽くしていきたい」と述べた。
貝戸清之・大阪大教授(社会基盤工学)は「近年は雨の降り方が強くなっていることは間違いなく、インフラに対して想定を超える力がかかる状況にある。破損した場合、(復旧に向けた)資金が無尽蔵にあるわけではないため、市民の防災意識を高め、避難行動につなげるというソフト面の対策も重要となる」と話す。
マンホール蓋吹き飛ぶ事案も
6月26日の大雨では、ポンプの水没とは別に、大阪市生野区や東成区の今里筋で地中から下水が噴き出す事案も起きた。大量の雨水が今里筋の地下を通る貯留管(全長約3キロ)へ流れ込み、行き場を失った管内の空気が圧縮され、空気圧でマンホールの蓋や路面が吹き飛んだとみられる。地中から水が噴き出す事案は、8月3日の雨でも発生した。
読売新聞が入手した動画では、6月26日に生野区で高さ数メートルの水柱が上がる様子が確認できた。飛んできた道路の破片で自宅前に止めていた車が損傷したという女性(61)は、取材に「地響きのような音がして、窓の外を見ると水が噴き出していた」と振り返った。
市によると、今里筋の地下の貯留管は北側の始点の上部に電線などの埋設物があったため、空気を逃がす穴が設置できず、管内に空気がたまりやすい構造になっているという。市はマンホールの蓋を空気が通りやすい形状のものに取り換えるなどの応急工事を実施した。



