90億円超の万博EVバス、不具合832件で使用断念 大阪メトロ報告書「安全リスク認識不十分」
90億円超の万博EVバス不具合832件 大阪メトロ報告書

大阪メトロは17日、2025年大阪・関西万博などに向けて購入したEV(電気自動車)バス190台の使用を断念した問題について、購入経緯に関する調査報告書を公表した。報告書では、万博輸送のためにEVバスを調達するという方針が過度に重視され、「安全リスクに対する認識が不十分だった」と結論づけられた。また、万博期間中にバスの不具合が832件発生していたことも明らかになった。

購入先選定の経緯と問題点

大阪メトロは、EVバス開発・販売会社「EVモーターズ・ジャパン」(EV MJ、北九州市)からバス190台を購入し、うち150台を万博で使用した。閉幕後も路線バスなどとして使用する予定だったが、万博期間中に事故が発生するなどし、2026年3月に全車両の継続使用を断念した。

調査報告書によると、大阪メトロは2021年頃から国の基金を活用したEVバスの導入を検討。当初は複数の国内大手メーカーの車両を検討したが、EVバスを量産しておらず、大阪メトロが希望する技術や製造スケジュールなどを満たすのはEV MJだけだった。2022年3月の経営会議と取締役会で、EVバス150台の導入が承認された。

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問題の背景について、報告書は「万博輸送のために全台EVバスを調達するという特定の方針・結論の実現が過度に重視されていた」と指摘。「実現を妨げたり、覆したりするような検討は躊躇される雰囲気が全社的にあった」と述べている。

不具合の実態とリスク認識の欠如

万博期間中、車内ライトの点灯不良など832件の不具合が発生。このうち運行に支障が出たケースは、ブレーキホースの損傷など243件だった。報告書によると、2022年当時、大阪メトロが国内の路線バスでEV MJのバス導入を確認していたのは2台のみだったという。

導入決定までに、当時の河井英明社長に対し、EV MJの実績の少なさがリスクとして報告されたこともあったが、「経営会議や取締役会でリスク検討は行われず、課題が十分に共有されることはなかった」とされる。子会社の大阪シティバスなどからも懸念が示されたが、経営判断に生かされなかった。

150台のうち50台については、大阪府・大阪市から2022年2月頃に補助金活用の案内を受けて導入が検討されたとし、「追加調達の必要性は低かったが、大阪市が(大阪メトロの)100%株主である関係性から、特段の議論なく判断されたと思われる」とした。一方、車両選定について政治的圧力はなかったとしている。

経営責任と再発防止策

河井氏の後任である角元敬治社長は17日、大阪市内で記者会見を開き、「多大なるご心配をおかけしたことについておわびを申し上げる」と陳謝した。再発防止策として、「組織風土や情報共有の仕組みの見直し」「意思決定プロセスの厳格化」など5項目を発表した。

河井氏は購入当時の社長で、経営責任を明確にするとして16日付で会長を辞任し、相談役に退いた。

購入費用と補助金の返還

報告書では、これまで非公表としてきた190台の購入費用が計90億円以上だったことも明らかにされた。購入には国や府・市からの補助金40億円超が充てられたとみられ、大阪メトロは返還手続きを進める一方、EV MJに購入代金の返還を求めている。EV MJは2026年4月、57億円の負債を抱えて東京地裁に民事再生法の適用を申請した。

太田肇・同志社大名誉教授(組織論)は「万博で使うとの方向性が決まったことで、異論を挟めず軌道修正が難しかったのだろう。日本的組織にみられる典型的な事例だ。問題が生じた組織環境を掘り下げるべきで、外部の視点を入れた第三者委員会での検証が必要だ」とコメントしている。

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