能登半島地震の発生から約10分で勤務先の宝達志水町役場に駆けつけたのは、町危機管理監の藤井博樹さん(61)。自宅は半壊だったが、「危機管理の責任者として当然のこと」と語る。
地震直後の対応
地震の際は羽咋市の自宅におり、揺れている最中に家を飛び出して役場に自動車で向かった。津波警報が出ており、集まって来た職員に被害状況の確認や、防災無線での避難の呼びかけを指示した。町内8か所の指定避難所の鍵を開けるように伝え、県や姉妹都市、協定締結先の企業などには支援物資や給水車の手配を要請。津波警報に伴う道路渋滞を解消するため、高台に自動車を誘導したり、避難所に水や食料を運んだりする指示も出した。
町内の一部損壊以上の住宅被害は1900棟近くに上ったが、幸い町民の死者・負傷者は出なかった。
自衛隊での経験
前職は陸上自衛隊幹部の1佐。全国の様々な大規模災害で派遣部隊の指揮統制、調整に当たってきた。自衛隊の退職を控え、出身地の周辺で住民の安全、安心につながる仕事をしたいと希望。4年前、母の出身地の宝達志水町で、災害対応に強い権限を持つ危機管理監に就いた。
陸自では、多くの災害で県庁や被災自治体の災害対策本部に詰め、派遣される隊員の調整・統制を担った。東日本大震災では、航空自衛隊と陸自の架け橋として災害派遣部隊の運用を調整したり、福島第一原発事故に伴う対応で全国の基地の消防車を原発に向かわせたりする経験もした。災害対応に当たった隊員が命を落としたこともあり、隊員の家族にも大変な苦労を強いたと思う。その思いを胸に、能登半島地震では、数千、数万の隊員の災害派遣を調整した経験や知識、様々な組織や人とのネットワークを生かして的確に指示を出せたと感じている。
今後の防災強化
災害に強いまちづくりに向け、町職員や町民の防災力向上にも取り組む。大災害が起きた時、行政機関だけで住民の安全を守ることはできないため、避難所運営は自主防災組織や防災士資格を持つ住民がリーダーになって担うなど、共助による対応強化を進めている。地域住民の多くが参加する防災訓練のほか、住民向けや学校での防災講演会も定期的に開いている。
町としても能登半島地震前から災害対策本部の機能強化を進め、ライフラインの事業者、警察や自衛隊などと連携した防災訓練も実施してきた。今年度以降は新たな危機管理計画の策定とともに、他自治体から支援を受けるための「受援計画」の作成に着手する。職員の防災教育の強化も進めたいとしている。
災害に強い町を目指すことで、住民の結束が強まったためか、犯罪や交通死亡事故の発生も少なくなっている。住民が安心して住み続けられる町にするため、これからも努力を続ける。



