福岡市で2006年、3児が犠牲となった飲酒運転事故から25日で20年となる。3児の母・大沼かおりさん(49)は昨夏から命の大切さを伝える講演に取り組んでおり、7月には我が子を思いながら初めて詠んだ詩の朗読を始めた。事故後、重度のうつ病となり苦しんだ経験を生かし、支援が必要な人の支えにもなろうとしている。
講演で伝える3児の存在
「飲酒運転の車に追突され大切な『宝物』を失った。大切な人と一緒にいる時に、このようなことが起きたらと想像してください」。福岡市内で24日に開かれた西日本鉄道グループの飲酒運転撲滅大会で、社員ら約350人を前に語りかけた。
事故後離れていた福岡に昨春戻り、取り組み始めた講演。福岡のほか、神奈川や大阪などでこの日を含め6回重ねてきた。
長男・紘彬ちゃん(当時4歳)は、事故翌月の誕生日を楽しみにしていたこと、次男・倫彬ちゃん(同3歳)の七夕の願い事は「ずっとおかあちゃんと一緒にいたい」だったこと、長女・紗彬ちゃん(同1歳)はよちよち歩きを始めたばかりで「ママ」とまだ言ったことはなかったこと――。事故前の様子を通じて3児について「確かに生き、輝いていた」ことを伝えている。
心境の変化と支援への思い
講演では事故にも触れるが、加害者への怒りや憎しみを語ることはない。11年に飲酒運転事故で長男・寛大さん(当時16歳)を亡くし、飲酒運転撲滅活動に取り組む山本美也子さん(58)は「大沼さんの講演は、加害者への思いではなく、愛する家族の話がメイン。心から尊敬している」と話す。
講演に取り組む中で、大沼さんの心境に変化も生まれている。きっかけは、昨年11月に開かれた事件や事故の被害者支援をテーマにした講演だ。講演の準備を進める中で、「苦しんでいる被害者らを支え、寄り添いたい」と思い始めた。事故後「助かってしまった罪悪感」にさいなまれ続けた大沼さん。「苦しむ人に『ありのままの自分で日々を過ごしていいんだ』と伝える活動ができれば」と語る。
事故翌年に生まれた次女・愛子さん(18)は「講演をするということは、悲しみと向き合うこと。無理をして心が壊れないか心配」と案じつつ、「悲しみの中で過ごしてきた母だからこそ伝えられることがあると思う。苦しんでいる人たちにも寄り添えるはず」とエールを送る。
詩「道しるべ」の朗読
飲酒運転撲滅の啓発活動に取り組む「チーム・ゼロ・フクオカ」から依頼を受け、7月に「道しるべ」と題する詩を詠んだ。3児と一緒に過ごした幸せな日々や、失った悲しみや苦しみ、事故後に生まれた4人を含む我が子7人への思い。これからについて。
詩は大阪市内で同月に行われた講演に続き、この日の講演の終わりにも朗読した。福岡県などが事故発生日に合わせて開く25日の飲酒運転撲滅県民大会でも読み上げる。



