熊本地震避難所でプライバシー確保、大学発の取り組み
熊本地震避難所でプライバシー確保、大学発の取り組み

熊本地震では熊本県内の避難所に6000人以上が避難している。突然、知らない人と一緒に生活することになった被災者の心身の負担は大きい。被災地では、過去の災害の経験を踏まえ、プライバシーを確保して不安を和らげてもらおうという、大学発の取り組みが進められている。

インスタントハウス、約1時間でドーム完成

300人以上が避難所に身を寄せる氷川町の空き地に2日、簡易住宅の「インスタントハウス」が設置された。地面に敷いたポリエチレン製の白い布は、送風機で風を送るとどんどん膨らみ、約1時間で高さ4.3メートル、直径5メートルのドームが完成した。

インスタントハウスは送風後、内側に断熱材を吹き付け固めることで自立する。10人以上が寝起きできる広さがあり、地面に固定する。20~30年もつという。重さは約120キロで、数人で運べる。「エアコンも付けられ、中で涼しく過ごせます」。建設業者らと作業した考案者の名古屋工業大・北川啓介教授(52)は汗を拭って説明した。

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北川さんは東日本大震災で、狭い空間に大人数が寝泊まりする避難所を目の当たりにした。被災者の生活環境充実の必要性を痛感し、開発に着手。2019年、実用化にこぎつけた。23年2月のトルコ地震や24年1月の能登半島地震で被災地に届けられ、被災者に喜ばれたという。

今回、北川さんは地震発生翌日に被災地に入った。氷川町民にインスタントハウスを説明すると、「ぜひ設置して」と求められ、町も快諾した。坂本哲也・氷川町総務課長は「様々な理由で避難所に来られない人も多い。申し出はとてもありがたかった」と感謝する。

インスタントハウスは氷川町と八代、宇城両市に計200棟以上を無償提供する予定だ。北川さんは「快適な住まいを早く提供し、健康を損なう被災者をなくしたい」と力を込めた。

更衣ブース、段ボールから改良

宇城市の体育・文化施設「ウイングまつばせ」では6日時点で、収容定員(450人)を上回る478人の被災者が過ごしている。個人スペースやプライバシーの確保が難しい状況の中、1日に女性更衣用のブース1か所が設けられた。

硬い紙の筒で組み立てた高さ約2.5メートルの骨組みを床まで届く布で囲った。設置を見届けた女性(78)は「見られる心配なく着替えや体を拭けるのは安心です」と話した。

ブースは設置場所に合わせて高さや広さを変えられる。避難所の居住環境を研究している熊本県立大の佐藤哲准教授(49)が無償提供した。佐藤さんは16年4月の熊本地震時に、熊本市から避難所でのプライバシー空間の確保策を求められ、軽くて入手しやすい段ボールを使ったブースを提案した。ただ、目隠しできる高さは1.3メートル程度で、「プライバシーを守るには不十分だった」。この経験から、スペースを十分に確保でき、人手をかけず簡単に組み立てられるブースの開発をスタートさせた。

改良を続けていたタイミングで、今回の地震が起きた。カーテン卸売業者から布を、紙加工品の製造販売会社から筒を譲ってもらい、接続器具は3Dプリンターで作って機材をそろえた。八代市や氷川町でも導入を準備しているという。佐藤さんは「多くの人の厚意で設置できた。診察スペースなど現場に合わせて使ってほしい」と話した。

国の指針改定、熊本市は備蓄生かす

災害時の避難所運営を巡り、国は能登半島地震の後、運営指針を改定した。1人あたり3.5平方メートルのスペース確保など、被災者が避難所で負担を感じずに過ごせる基準(スフィア基準)を盛り込み、運営主体の自治体に実施を求めた。

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今回の地震で、被災者のプライバシーやスペースを確保できた自治体もある。熊本市は避難所に間仕切りやテントを数日で設置。基準に沿った運営をおおむね実現できているという。10年前の熊本地震で避難所が混雑したことから備蓄や業者との連携協定を進めており、市は「教訓を生かせている」とする。