最大震度7を観測した熊本地震の被災地は13日、盆の入りを迎えた。激しい揺れの爪痕が残る熊本県宇城市の墓地では、倒れた墓石の前で被災者らが手を合わせた。仏具店や石材店には、壊れた仏壇や倒れた墓石の修復依頼が相次いでいる。
大破した墓前に涙
「生前、自分をかわいがってくれた先祖の墓が悲惨なことになってしまい、申し訳ない」。13日午前、宇城市の正願寺を訪れた市内の自営業の男性(69)は、基礎部分から崩れて大破した墓を目の当たりにして涙をにじませた。
寺がある同市は7月28日の地震で震度7を観測した。境内にある約90基のうち6割ほどで墓石や墓碑が倒壊。墓石が割れて通路に散乱したり、納められていた骨つぼが割れたりする被害が出た。寺の本堂も一部の壁が落下し、納骨堂や石垣なども被災した。
2016年の熊本地震の際は、境内のほぼ全ての墓の墓石が倒れるなどした。住職の宇土泉爾さん(72)は、「再び壊れた墓を見てがっかりする人の姿に心が痛む」と話す。
各地で墓石倒壊、修復依頼殺到
氷川町では、町が管理する氷川町桜ケ丘墓地公苑内にある約180基の大半で墓石が倒壊するなどした。八代市内の3か所の市営墓園でも複数の被害が確認されている。
こうした中、仏具店や石材店は修復依頼の対応に追われている。熊本市の「輪島漆器仏壇店」には地震後、50件以上の相談が寄せられている。社長の永田幸喜さん(64)は、「弟と2人で対応しているが、お盆には間に合わない家庭も出るだろう」と明かす。
10日、八代市の実家で仏壇の修復を受けた50歳代の女性は、ほっとした表情を浮かべた。昨年8月、大雨に見舞われ、実家は床上20センチまで浸水。同10月に畳を張り替えたばかりだった。地震で実家の壁は崩れ、照明器具も落下。仏壇の高さを調整する台は水平方向にずれ、不安定な状態になった。
修復に訪れた永田さんはずれた仏壇を元に戻し、香炉からあふれ出た灰を拭き上げ、仏具一式を整えた。女性は「盆に間に合わないと思っていた。お供えもできていなかったから本当によかった」と喜んだ。
同店は10年前の熊本地震の際と同様に、部品交換や職人の手で本格的な修復が必要なものを除いて無料で対応している。今回はさらに、避難先でも置きやすい小型の仏壇を無償で提供しているという。永田さんは「仏壇は心のよりどころ。できる限り、被災者を支えたい」と語る。
宇城市の「西本石材店」にも、破損した墓石の修復や積み直しの相談が約300件寄せられているという。西本美和専務は、「墓が壊れ、避難先に遺骨を持って行っている人もいる。初盆を迎える家庭などのために力を尽くしたい」と話す。
業界団体も支援検討
熊本県石材工業組合連合会には、同市のほか、震度6強を観測した八代市の石材店などからも多数の墓地被害の報告が寄せられている。西嶋隆信会長(62)は、「被害を受けて墓じまいを考える人も出てくるだろう」と懸念する。
県内の葬儀業者などでつくる県葬祭事業協同組合は16年の熊本地震の際、被災者向けに約3000個の骨つぼを無料で配布した。今回も同様の支援を行うことを検討しているという。
熊本県は13日午前8時時点で、熊本地震による人的被害が393人、住宅被害が2万7872棟に上ると発表した。住宅被害の内訳は、全壊1274棟、大規模半壊8棟、半壊1038棟、一部破損9468棟など。避難所などへの避難者は、11市町で3662人。



