マンション住民になりすまし、工事関係者が大規模修繕会合に潜入…報酬付きチラシで誘導
住民なりすまし工事関係者が大規模修繕会合に潜入

マンションの大規模修繕を話し合う住民の会合に、工事関係者が住民になりすまして参加する事案が全国で相次いで確認されている。工事関係者は自社への工事発注を誘導する目的で参加しているとみられ、住民同士のつながりが希薄なマンションでは発覚しにくいという。国土交通省は管理組合の役員選任時などに本人確認を徹底するよう注意を呼びかけている。

横浜市のマンションで発覚

先月19日夜、横浜市の大規模マンション敷地内の集会室で、住民ら約10人が集まった大規模修繕の方向性を話し合う会合で、管理組合の男性理事長が突然、大阪の工事会社の社名を挙げて「この工事会社が各地のマンションの大規模修繕に関わっているという情報がある。あなたはそこの社員ですか」と質問した。質問を受けた参加者の男性は「僕は違いますけどね。個人でやってます」と返答。理事長が「関係ないのか」と追及すると、「と思いますけどね。実際、昔いたのは事実です」と歯切れの悪い答えに。別の男性も「いや、私も違います。今は不動産屋やってます」と関係を否定した。

理事長らは数か月間、この男性2人がマンションの住民か調査した結果、居住実態はないと判断。別のマンションの会合にも入り込んでいたという情報を事前に得ており、「色々なマンションに入り込んでいるのは知っている。うちのマンションから縁を切ってほしい。出てってください」と強く促すと、2人は無言のまま立ち去った。

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住居侵入容疑で逮捕も

神奈川県内の別のマンションで昨年5月、同じ大阪の工事会社の別の社員2人が住民になりすまして大規模修繕委員会に参加。不審に思った住民らが身元を問いただしたところ、なりすましを認めなかったため、警察に通報した。2人は逃走するなどした後、県警に住居侵入容疑で逮捕され、後日、処分保留で釈放された。

読売新聞の取材では、東京都内や千葉県内のマンションでも、同じ大阪の工事会社の社員や関係者とみられる人物が住民になりすまして会合に参加した事案が確認された。

チラシで報酬をうたう手法

会合に入り込む手法としては、マンションのポストにチラシを入れることが多い。チラシにはアンケートに答えたり覆面調査に協力したりすると報酬がもらえるなどとうたい、連絡してきた住民を説得して本人や代理と称して会合に出席させていたという。なりすまして会合に参加した人物は「業界に詳しいので役に立ちたい」「工事会社にいた」などと自ら理事や大規模修繕委員に立候補。工事業者の選定などを依頼する設計コンサルタントの比較表も自ら作るなど、議論を主導していた。

国交省が対策を強化

こうした事案が相次いだことを受け、国土交通省は昨年10月、マンションの管理規約のひな型となる「標準管理規約」を改正した。同規約では新たに、役員の選任時にはマイナンバーカードや運転免許証といった身分証明書の提示を求めるなど、本人確認することを例示している。

マンション管理士の大浦智志さん(53)は、規模が100戸超のマンションでは修繕費が高額になり、住民同士のコミュニティーが希薄になりがちで、業者に狙われやすいと指摘。「大規模修繕委員などは、原則代理や委任を認めず、区分所有者であることと、顔写真付きの本人確認書類を提出させることは最低限必要だ」と話した。

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工事会社社長の釈明

社員が住民になりすましていた大阪の工事会社の社長は読売新聞の取材に複数回応じ、6月19日に行われた横浜市のマンション住民の会合にも社員が参加したことを認めた。社員が会合に参加する手法を始めたきっかけについては、「工事を取り仕切る管理会社に自分たちが法外なマージンを払わされる仕組みから抜けるため、2017年頃から住民に直接アプローチする営業を始めた」と説明。昨年社員が逮捕されたことについては、「名前を偽ったり、うそをついたりしたのは悪かったと思っている。ただ、やり方はゲリラだが管理会社から住民を守るためにやっているつもりだ」などと釈明した。